大阪で伝統構法の家づくり!・・・石場建て/木組み/土壁 ~今さらマイホーム新築

五十代も後半、自宅を再建新築。 今さら住宅ローン!建売りのローコスト住宅か…。 で、行き着いたのはやっぱり自然素材、地元の工務店。 手刻みの材木、金物をほとんど使わない躯体、美しい木組み。 間取りの打ち合わせがほぼ終わった頃、棟梁がつぶやいた。 「ホンマは石場建てがエエんやけどなぁ・・・。」 「えっ?石場建てってなんですのん?!」・・・ 家造り、伝統構法について、発信していきます。

「限界耐力計算」⇒「適判」⇒「建築確認申請」

昨日(4/21)、棟梁に呼ばれて事務所にカミさんと駆けつけた。
間取りは3月末頃に棟梁と既に合意しており、いよいよ設計士さんとの打ち合わせ。

しかしそれは、在来工法の範疇の中で
極力金物接合無しで無垢材や土壁を使ったものという前提だった。
その後に「伝統構法」で!と話が急展開してから、それがどう料理されるのか・・・?と、
期待と不安をいっぱい抱えながら設計士さんとの初対面。

示された図案を一目見て、愕然とした!!!
そもそも妻と喧々諤々案を練って、棟梁とも数か月に渡り擦り合わせてきた案とは、
コンセプトがまったく違ったものになっていた。

曰く、在来工法なら元の図面通りでほぼ問題ないが、石場建てだと建築確認のため
「限界耐力計算」で設計し直さないといけないから、このままは無理と。
そんなことは知っている。「伝統構法」にしようと決めてから、素人ながらいっぱい調べた。
このブログも、そのことを記録し発信するために書いている。

でも、ここまで大幅に見直しが必要だとは・・・???
甘かった!・・・にしても、なんか説明に納得がいかない。
棟梁も施工の立場から私たちの側に寄り添って口を挟んでくれた。

もう一度、元の案を最大限生かした設計をやり直してほしい!
こちらも譲歩せざるを得ない部分は譲歩しつつ、再度持ち帰ってもらい再検討をお願いした。

そもそも「限界耐力計算」って?

2000年6月の建築基準法改正で仕様規定から性能規定に移行され、
満たすべき性能を明確に記述する性能規定型設計法が導入された。
さらに2007年6月の建築基準法改正で建築確認・検査が厳格化された。
これが事の発端。

木造建築物のうち2階以下の木造建築物「4号建築物」のほとんどは在来工法で、
仕口接合部を金具補強し、筋かいや構造用合板などの耐力壁の壁倍率に基づいた
壁量に依存して耐震性能を確保するため、この場合は簡便な壁量計算が適用される。
ところが「伝統構法」では、筋かい等の斜材や構造用合板等の面材や
金具等による補強をそもそも不要とする設計思想のため、かえって
施行令3章3節の木造の「仕様規定」に反する!ことになってしまい、
簡便な壁量による構造計算は適用外になるということ。

2000年6月に建築基準法によって新たに導入された「限界耐力計算」は、
この「仕様規定」によらなくても良い検証法として位置づけられた。

「伝統構法」の耐震性能の評価について、建築基準法の枠組では「限界耐力計算」が
耐力と変形性能の両者を考慮した耐震性能を評価できる計算法ということ。
つまりこれにより、「伝統構法」も建築基準法の枠組みの中で一応は設計が可能となった。

この「限界耐力計算」に基づく耐震性能評価法や耐震設計法の実用化は、
「伝統構法を生かす木造耐震設計マニュアル
 ー限界耐力計算による耐震設計・耐震補強設計法ー」にまとめられている。
こうして、途絶えていた「伝統構法」は、ようやくまた新築され始めるようになってきた。

しかし2007年6月の建築基準法改正で「構造計算適合判定(適判)」が導入されて
建築確認・検査が厳格化し、「伝統構法」にも「適判」が必要とされるようになった。
つまり「限界耐力計算」が必要なら木造2階建等の小規模な(4号)建築物でも、
大規模な建築物と同じ手続きを取れということになってしまったのだ。

それ以降、「伝統構法」は確認申請や施工が著しく減少してしまった。

最近はようやく「伝統構法」においても、確認申請時に必要な書類が整備され、
確認申請の手続きがある程度スムーズに進むようになってきたようだ。

私たちの場合、その設計士さんによると、早くて2か月か?とのことだった。
以前なら、半年とか言われていたようなので、半歩前進ではあるだろう。

このように「伝統構法」は法的に十分正当に位置づけられているとは言えないので、
限界耐力計算や適判や建築確認などでの多大な時間・労力・出費が疎まれて、
ただでさえ技能者が不足しているのに、日本の伝統の英知に赤信号が灯っている。

在来工法なら、こんな煩雑な手続きは必要がないので、5月には着工できる予定だったのだが、
「伝統構法」でとしたことで、いつになったら着工にこぎつけられることやら・・・。

しかし逆に、匠の経験と技に依存していたものを発想を変えて、
性能規定型となった現行法のなかで科学的に性能が担保されるようになったことで、
今後の「伝統」の「保存」ではなく「発展」が図られればとも思う。

棟梁は、もう自分の頭の中では、木組みをどうするかでき上っていると言っていた。
あとはそれを、そして私たち施主のこの家を造るにあたってのコンセプトを、
どれだけ最大限、法規の中に落とし込めるか!・・・設計士の腕の見せ所である。

「伝統構法」の新築は、あらためてまだ黎明期といえるだろう。
私たちの家の新築が、その実証実験台となって社会貢献の一端になれればとも思う。

こうなれば、やりきるしかない!!!