大阪で伝統構法の家づくり!・・・石場建て/木組み/土壁 ~今さらマイホーム新築

五十代も後半、自宅を再建新築。 今さら住宅ローン!建売りのローコスト住宅か…。 で、行き着いたのはやっぱり自然素材、地元の工務店。 手刻みの材木、金物をほとんど使わない躯体、美しい木組み。 間取りの打ち合わせがほぼ終わった頃、棟梁がつぶやいた。 「ホンマは石場建てがエエんやけどなぁ・・・。」 「えっ?石場建てってなんですのん?!」・・・ 家造り、伝統構法について、発信していきます。

限界耐力計算・・・石場建て伝統構法の構造計算

限界耐力計算」。
 
石場建ての家を建てることになってから、
相当な時間と手間と費用がかかったのは、これが大変だったから。
で、それ、何?・・・について。
 
2000年6月の建築基準法改正で仕様規定から
性能規定に移行され、満たすべき性能を明確に記述する
性能規定型設計法が導入された。
さらに2007年6月の建築基準法改正で
建築確認・検査が厳格化された。

木造建築物の内いわゆる普通の家=
(2階/延床500㎡/全高13m/軒高9m 以下の木造建築物)
「4号建築物」のほとんどは在来工法で、
仕口接合部を金具補強し、筋かいや構造用合板などの
耐力壁の壁倍率に基づいた壁量に依存して
耐震性能を確保するため、この場合は
​簡便な壁量計算が適用される。​
(※厳密な構造計算をしなくてもよい4号特例)


ところが「伝統構法」では、
筋かい等の斜材や構造用合板等の面材や
金具等による補強をそもそも不要とする設計思想のため、
かえって施行令3章3節の木造の
「仕様規定」に反する!ことになってしまい、
簡便な壁量による構造計算(4号特例)は適用外ということになる。
 
2000年6月に建築基準法によって
新たに導入された「限界耐力計算」は、この
「仕様規定」によらなくても良い検証法として位置づけられた。

「伝統構法」の耐震性能の評価は、
建築基準法の枠組では「限界耐力計算」が
耐力と変形性能の両者を考慮した
耐震性能を評価できる計算法ということである。

これにより「伝統構法」も、
建築基準法の枠組みの中で一応は設計が可能となった。

この「限界耐力計算」に基づく
耐震性能評価法や耐震設計法の実用化は、
という本にまとめられていることは、
2019.8.10.「(その)出版報告講演会」​の記事でも触れたとおりである。


こうしてようやく「伝統構法」は、
新築され始めるようになってきた。
しかし2007年6月の建築基準法改正で
「構造計算適合判定(適判)」が導入されて
建築確認・検査が厳格化し、
「伝統構法」にも「適判」が必要とされるようになった。

つまり「限界耐力計算」が必要なら
木造2階建等の小規模な(4号該当)建築物でも、
大規模な建築物と同じ手続きを取れ
ということになってしまったのだ。
それ以降、「伝統構法」は
確認申請の受付や工事の着工が著しく減少してしまった。

最近はようやく「伝統構法」においても、
確認申請時に必要な書類が整備され、
確認申請の手続きが進むようになってきたようだ。

それでもやはり建築確認は、
「限界耐力計算」の上での申請であるため、
半年がかりの大仕事である。

このように「伝統構法」は
法的に十分正当に位置づけられているとは言えないので、
限界耐力計算や適判や建築確認などでの
多大な時間・労力・出費が疎まれて、
ただでさえ技能者が不足しているのに、
日本の伝統の英知に赤信号が灯っている。


しかし逆に、
匠の経験と技に依存していたものを発想を変えて、
性能規定型となった現行法のなかで
科学的に性能が担保されるようになったことで、
今後の「伝統」の「保存」ではなく「発展」が図られればとも思う。

棟梁は、基本設計案ができた段階で、もう自分の頭の中では、
木組みをどうするかだいたいでき上っていると言っていた。
あとはそれを、そして
私たち施主のこの家を造るにあたってのコンセプトを、
どれだけ最大限、法規の中に落とし込めるか!・・・。

そして棟梁と建築士の悪戦苦闘が始まった。
​在来軸組工法(許容応力度計算)とは全く違った構造計算なので、​
二人とも勉強の仕直し、まさに腕の見せ所!
​(※4号特例により多くの家はこの構造計算さえしていない)​
「伝統構法」の新築は、あらためてまだ黎明期といえるだろう。
私たちの家の新築が、その実証実験台となって
社会貢献の一端になれればとも思う。
 
↑構造計算されていないのが一般的なことや、4号特例の問題点などが詳説されている本。
 
限界耐力計算☜click(元記事)