大阪で伝統構法の家づくり!・・・石場建て/木組み/土壁 ~今さらマイホーム新築

五十代も後半、自宅を再建新築。 今さら住宅ローン!建売りのローコスト住宅か…。 で、行き着いたのはやっぱり自然素材、地元の工務店。 手刻みの材木、金物をほとんど使わない躯体、美しい木組み。 間取りの打ち合わせがほぼ終わった頃、棟梁がつぶやいた。 「ホンマは石場建てがエエんやけどなぁ・・・。」 「えっ?石場建てってなんですのん?!」・・・ 家造り、伝統構法について、発信していきます。

耐震性・・・伝統構法/石場建ては不利か?

​​​伝統的構法で作られた木造建築物の耐震性能検証実験​​


前回の記事で、石場建て伝統構法の構造計算について述べた。

話しがややこしいが、要は、
古来からずっと木造軸組み工法は石場建ての「伝統構法」、
戦後になって広まったのがコンクリート基礎の「在来工法」。

で、在来工法は建築基準法上の位置づけがあり、
構造計算は許容応力度計算を用いるが、4号特例によって
必ずしも構造計算されているわけではない。

一方、伝統構法は建築基準法上の位置付けが明確でないので、
限界耐力計算による構造計算で耐震性を証明してはじめて
合法的に建てることができる。
・・・という話し。

この耐震性について、両者の特性を比較してみよう。



「在来工法」は・・・、
斜めの部材(筋交い)で補強された面で耐力を得ることから、
3.5寸角など比較的細い柱を用い、
一般にプレカットの浅い仕口の材木同士に
接合金物を木ネジで打ち込む。
そのため、木の繊維が裂かれることになる。

地震の際は、地面(基礎)に緊結されているので
震動の直撃をモロに受ける。
そのため一定の震動までは耐えるが、
限界を超えると木材が折れてしまい、一気に倒壊する。
そこで、屋根は軽い方が有利になる。

現行の建築基準法は、この「耐震性」を上げること
地震動に対してガチゴチに固めることで耐えること)に主眼が置かれている。

しかし一度目の地震では倒壊を免れていても、前述のように
金物で緊結された接合部は、破断しかかっている可能性が高い。

その損傷個所は大壁の内部で見えないため危険に気付くことができず、
二度目三度目の余震でついには倒壊してしまったという
熊本地震の被災家屋の例は記憶に新しい。

一方、石場建ての「伝統構法」は、地面に緊結しないため、
建築基準法の規定外!となっている。

木の性質に逆らわない手刻みの仕口で(金物を打ち付けず)組むため、
4寸角以上の太い材木を用いる。
梁も木の曲がりをアーチとして利用するなど、
できるだけ木の繊維に逆らわないよう木取り(製材)する。

しかも地面と緊結せず礎石の上に乗っているだけなので、
屋根は一定重い(家自体の重量が重い)方が有利となる。

地震の際はノッキングしたり多少ズレたりするが、
ガチゴチに固めず木組のしなりを許容することも相まって、
震動の直撃をかわす「免震性」「制震性」の高い構法と言える。
ひずむことはあっても倒壊してしまうということはないそうだ。

                        ​(E-ディフェンスによる、石場建て伝統構法の実大耐震実験)​
実際、大地震で倒壊した家は、
大半は、重い!屋根で細い!柱の「在来工法」の家だそうだ。
 
「伝統構法」で倒壊したものは、軟弱地盤で地面ごともっていかれたか、
足元が腐れや蟻害などに侵されていたものだけとの調査結果がある。
つまり、工(構)法自体の脆弱性の問題ではないようだ。

そもそも阪神淡路大震災を例にとれば、神戸は都市の規模からの比較でいうと、
東京大空襲より激しい空襲を受けていて東京以上の壊滅状態だったので、
伝統構法の家なんか神戸の平地にはほとんど残っていなかったそうだ。

そして戦後の住宅難のなかで、急ピッチで粗製濫(乱)造された在来工法の家々。
それらに最低限度の質を担保する必要から、建築基準法ができた。

マスコミは倒壊した木造住宅をことさら取り上げて木造は弱いと喧伝した。
しかし、だから、倒壊したのは「伝統構法」でない濫造された木造家屋である。
「木造が弱い」というのは、誤解を広めようとする悪意のある表現ではないか。

「伝統構法」の木造建築物は、
木材と木組みの粘り強い特性を生かして耐震性能を発揮するものであり、
それほど大きな耐力はなくとも大きな変形性能があるので、
それによってかえって大きな強度を発揮して倒壊を免れる。
このことは、昨今の大地震での事例調査や​構造研究・実験​でも既に証明されている。
                        ​(​E-ディフェンスによる、石場建て伝統構法の実大耐震実験​)​
古来からの知見と技が生きる伝統的構法は、
地震にも倒壊しないという性能でいえば、
地震に向き合う思想が根本から違うとはいえ、
最新の耐震住宅工法に引けを取らないことが既に科学的に明らかにされている。

地震で倒壊するか、躯体を保持できるか・・・。
地震は、住む人を守るはずの家が逆に命を奪う
凶器になってしまいかねないということが、最大の問題である。

幸い一度の地震で倒壊を免れても、
余震…本震…余震…二度目三度目で家の形を保てるかは、
生死を分けた後の被災後の生活にも大きく影響する。

しかるに、建築基準法の「耐震」基準が2000年には更に引き上げられたが、
依然「免震・制震的」木造の「伝統構法」は顧みられていない。
これはまさに、「木を見て森を見ず」であろう。



日本の「伝統構法」は、まさに
自然に対抗するのでなく自然と共生する価値観…哲学とも言えるのである。



 

 

 

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