大阪で伝統構法の家づくり!・・・石場建て/木組み/土壁 ~今さらマイホーム新築

五十代も後半、自宅を再建新築。 今さら住宅ローン!建売りのローコスト住宅か…。 で、行き着いたのはやっぱり自然素材、地元の工務店。 手刻みの材木、金物をほとんど使わない躯体、美しい木組み。 間取りの打ち合わせがほぼ終わった頃、棟梁がつぶやいた。 「ホンマは石場建てがエエんやけどなぁ・・・。」 「えっ?石場建てってなんですのん?!」・・・ 家造り、伝統構法について、発信していきます。

間伐ボランティア体験

先週日曜日(1/19)のこと。
大阪府立大学工業高等専門学校で唯一木造建築を研究してらっしゃる
岩本先生のお誘いで、先生の研究室の学生さん5人と一緒に、
間伐ボランティアに妻と参加してきました。

先生は、我が棟梁の恩師であり伝統構法にも造詣が深いということで、
拙宅の建築も研究対象にしていたくようお願いしています。
研究室では、ずっと茨木市里山の間伐ボランティアに関わってらして、
今回も伐り倒した木を卒業制作に利用するということで、
その活動に同行させていただいたというわけです。

このような市民の自主的な活動で里山の人工林の植生が守られていることを
これまで知らなかったんで、ぜひ体験してみたいとお誘いを快諾。

以前住んでいた家の裏は不在地主の放置された雑木竹林だったので、
日当たりを確保するためにしょっちゅう分け入って伐っていたのですが、
本格的に植林された檜を伐るのは初めてなので、正しい伐り方も知りません。

JR茨木駅に9時に集合。
失礼ながら私たちよりずっと歳上の方々がたくさん集まってきます。
数台の車に乗り合わせて北上、京都府亀岡市との府境にほど近い
茨木市銭原地区の山の民有林を目指します。

森林つくり隊の活動場所は数か所あるのですが、
今回は車の台数が多くなったということで、
車で乗り入れやすい林道が整備されているところになりました。
なので、そんなに山奥に来たという印象ではありません。


防寒対策をと事前に言われていたのですが、今年の暖冬は異常です。
大阪でもこの時期1度や2度は雪がほんの少し積もる日があるもんなんですが、
今冬は氷点下まで下がる日がなく、雪はちらつきさえしません。
この日も比較的暖かく、地球温暖化の懸念をよそに、
寒さの苦手な私たちはホッと・・・。

森の入り口で再集合して、自己紹介や安全上の注意や体操をしてから、
ベテランの会員さんに従って森に分け入ります。
といっても、車で現場のすぐ近くに乗り入れたので、斜面はなだらか。
会員の皆さんの手によってしっかり手入れされているので、
とても歩きやすく、ヒノキ林の爽やかな空気に癒されます。
既にところどころ間伐されていて、チラチラ陽が射す地面は美しい。


そもそも、なぜ間伐が必要なのか。
その前に、なぜ間伐しないといけないほど密集して苗木を植えるのか。

スカスカに植えると、さすがの杉も檜も真っ直ぐに伸びないんだそうです。
斜面の角度や日当たりの方角や風向きや積雪など、いろんな要因があります。

一定の高さ太さになったら、さらに大きく育てたい木を残して、
細い木は伐っていきます。畑の間引きのようなものです。
そうすることで木がしっかり根を貼ることができるようになると同時に、
山の中まで陽が射し下草の成長が促されて栄養豊富な森になり、
ひいては倒木や土砂崩れなどの災害を防ぐことになるのです。

そして間引き菜を食べるように、間伐材も材木として利用します。
ところが、山主にとって間伐は重要だとは分かっていても、
この間伐をする人手や経費がない、
伐ってもかけた労力や経費に見合った収益があげられないなどから、
​間伐されずに放置されている人工林が全国に文字どおり山のようにあるのです。

​                                 され荒れ放題の人工林)
それは、外国産の木が安く輸入されて、国産の木の価格が暴落していること、
日本の人工林は急傾斜地が多く伐採や搬出が大変なので、
そんな安値ではかえって赤字になってしまうこと。

そして日本人の無節材信仰が節のある木の価格を下げる圧力となり、
適正に枝打ちを続ける労力や経費の確保が難しい現状では、
例え住宅の柱が取れる太さの間伐材でも需要があまりないということだそうです。

実際にこうして人工林に入ってみると、百聞は一見に如かず。
この日のこの場所は比較的斜面は緩やかでしたが、それでも複雑な地形。
木を見上げれば、10m20m上までどうやって枝をたびたび落としていくの?
その大変さがよく分かります。


さて、まずは手本に1本伐って見せてくださいます。
最初に密生したなかからどうやって伐る木を選ぶか。
倒した後処理がしやすいよう等高線より上気味に倒す方向を見て、
木々の間に何十m先まで倒れる隙間があるか、
枝が上で引っ掛かったりして倒れる途中で引っ掛かってしまわないか、
下から上までよく見極めます。


それから、見定めた方向に引き倒すためのロープを、
10m近く上の方の枝にかけて倒す方向を定めます。
 

次に、その方向にきちんと狙いを定めて倒れるように、
図のように受け口を切り開いていきます。

△定規のようなものを当てて切り口の方向が合っているか確かめます。


それから、その受け口とずれないように、追い口を切ります。
これが実はかなり微妙。この追い口がずれると、
せっかく合わせた受け口の方向とズレて木が倒れてしまうのです。

ツルと呼ばれる倒れるときに丁番になる部分を歪みがないよう切り残して、
ツルだけでまだ立っている木を
さっきのロープで方向を調整しながら引き倒します。

とはいえ、勢いよく倒れ始めたら何十トンも重力がかかっているので、
人力のロープでは方向そのものの大筋は変えられません。
実際上、受け口と追い口とツルのバランスだけで倒れる方向が決まるので、
鋸を入れるにはかなりの腕前が必要となってきます。

ロープで引き始める前に笛で周囲に知らせ、
その木に関わっている人たちも木の真横より後ろへ退避!
さすがにお手本の木は、ベテランさんの手で見事狙った方向へ。
地響きを立てて倒れる様は、目前で見ると圧巻です。


そのボランティアさん、そもそも木にも山にも関係ないお仕事だったそうで、
定年後やってみようということで始め、
狙い通りに倒すことができた快感にハマってしまって続けているんだとか。
それ、分かるような気がします!

次は自分でやってみる番。
といっても独りではようせんので、倒すべき方向は見極めていただいて、
一つひとつの工程を指示してもらいながら、
切り口もチョークで書いてもらって鋸を入れていきます。

木の伐採は、今では普通はチェーンソーを使うのですが、
今日は体験ということで、手本のときから手挽き鋸。
水平に横たえた材木を垂直に切るのは慣れているんですが、
立ち木を水平に切るのはなかなか難しい。

斜面で、しかも垂直とは限らない立ち木に水平に鋸を当てるのは、
けっこう難しいもの。水平感覚がつかみにくいし、
つい手元側が上がってしまうというクセが露呈します。


「なかなか鋸挽き上手いやん・・・」などと言われながらも、
横挽き鋸で斜め30~45°に受け口を切っていくのはかなり大変です。
追い口も切り進むにつれ上から木の重さがかかってくるし、ヘトヘト。
どんどん切り口が歪んでいき、受け口と追い口がズレてしまいます。

てなことで、2本目までは大幅には外さなかったものの、
狙った方向からは多少ズレてしまいました。

昼食の弁当のあと、満を持して3本目。
けっこう思ったとおりに切れているような・・・。
案の定、狙いの方角にピッタリ倒れていきます。
これは快感!!

切り株を検証・・・
「正しくセオリー通りの形できちんと切られてるやろ!」と指導員さん。

やっぱり基本に忠実というのは、どんなことでも大切です。

ところで、
倒した木は、その場で枝を幹の際から全部切り落として、
幹は2mほどの玉切り(輪切り)にして積んでいきます。


材木にするには数か月間は枝の付いたまま放置すると、
葉枯らし乾燥といって葉からの蒸散作用でいい天然乾燥ができるので、
それから必要な長さに玉切りした丸太を搬出して
製材すればいいのにと思ったのですが・・・。

聞くところによると、そもそもこの間伐材は、使い道が無いそうです。
せいぜいチップにするか、製紙原料にするか。
前述のように労力や経費に見合った収益を上げられないのです。

この山主さんも、それでもこうして保全を続けていれば、
孫子の代にはこの山も木も何らかの宝になるかもしれないと、
せめてボランティアに委ねてでも間伐を続けているんだそうです。
それでかろうじてこの山は美しく保たれ、景観上も防災上も優れています。



こうしたボランティア活動は、いま全国に広がっているそうです。
政府も文字どおり宝の山である国産材の活用に
ようやく前向きになってきたところですが、
結局は大企業による皆伐を推進しているだけで、
間伐や植林など山や資源や国土の保全を進めるわけでもなく、
そういうことは民間ボランティアの領域となっているようです。


そんな山の事情さえよく知らず、
こんな身近で間伐ボランティアが活動していることも知らず、
国産材の無垢材で我が家を建てるんだ!と息巻いていたのかと、
あらためて我に返る実体験の機会になりました。

そして今、
この山に大量の間伐材が用途もなく積み上げられています。
住宅の柱に十分使える太さの木が、短く玉切りされて。

それでも、これが欲しくて、もっと長ければ使えるのにって、
そんなここの丸太を運び出すことができて利用できる人や業者は、
実は探せば意外にたくさんいるんじゃないでしょうか。

今、自伐型林業の取り組みが始まっているようです。
薪ストーブの利用も少しずつ広がりを見せ、
日本に合った針葉樹で焚ける薪ストーブも出てきました。
格安に仕入れた丸太を自家製材してコストを下げている
天然乾燥無垢材利用の​建築業者​・​​工務店​も現れ始めています。

そんななか、せっかく冬に伐った丸太がこの山の中で春から夏を迎え、
山積みのまま虫や菌類に侵されていくのかと思うと、
あまりにももったいないと思いました。

検索してみると、
活動の中に山の保全のことは謳っていても、
間伐材の利用のことは載っていないようです。

間伐材のが欲しい、丸太が欲しいという人が、
どこでどうやって手に入れたらいいのか分からないという声も聞きます。
このようなボランティア団体が、需要と供給の断絶を繋ぐ、
それで黒字にはならなくても赤字にならない程度の収益構造を工夫する、
そんな活動もできたらいいんじゃないかなぁ・・・
なんて思ったりもしました。

たった1回、4~5時間で何が分かんねん!ってところですが、
天然乾燥無垢材を使った家を建てようと思い立ったところから、
間伐材のボランティアや有効利用についてまで、
幅広くいろんなことに思いを巡らすことができた
大変貴重な機会となりました。

間伐ボランティア活動のことや木の伐り方など、何も知らない私に
懇切丁寧にご指導くださったボランティアの方々、
このような機会にご縁をくださった岩本先生、
本当にありがとうございました。
 
 
間伐ボランティア体験 ☜click(元記事)