大阪で伝統構法の家づくり!・・・石場建て/木組み/土壁 ~今さらマイホーム新築

五十代も後半、自宅を再建新築。 今さら住宅ローン!建売りのローコスト住宅か…。 で、行き着いたのはやっぱり自然素材、地元の工務店。 手刻みの材木、金物をほとんど使わない躯体、美しい木組み。 間取りの打ち合わせがほぼ終わった頃、棟梁がつぶやいた。 「ホンマは石場建てがエエんやけどなぁ・・・。」 「えっ?石場建てってなんですのん?!」・・・ 家造り、伝統構法について、発信していきます。

土壁の魅力 : 大直し~中塗り と 上塗りサンプル ② ・・・ 職人と共につくる家

今日は重陽節句(菊の節句)。
菊酒や栗ご飯で秋を楽しみ邪気を払い長寿を願うのは、秋の風物詩。

大型の台風9号10号がたて続けに沖縄・九州を縦断北上して、
また大きな被害をもたらしましたが、近畿地方への影響はあまりなく、
台風一過の9/7(月)からは、早くもエアコンなしで夜を過ごせる時季に入りました。

窓から外気を取り入れて扇風機を回していれば、一晩中もう寝苦しくはありません。
窓を開けていると(1階はそうもいきませんが)、
2階の寝床にも秋の虫の声がかすかに聞こえてきて、
これを雑音と感じる欧米人には無い日本人ならではの豊かさを感じることができます。

こうして日本では、外と繋がった室内環境を大切にしてきました。
暑いときも、寒いときも・・・少なくとも暑過ぎず寒過ぎずの太平洋ベルトの地域では。
それが日本の豊かな文化や感性を育んできました。

屋外から室内を閉ざすことを旨とする北欧の住宅の価値観を日本に持ち込んだ
高気密高断熱住宅が喧伝されています。
曰く、エアコンが要らないのは1年でほぼ4月5月と9月10月、
そのたった4か月のためにエアコンに頼らない家をつくるなんてオカシイと!

そうかなぁ?・・・これは裏を返せば、私の生活実感からすれば、
エアコンの常時稼働が必要な時季は、8月と12月1月2月のたった4か月!
今日の枚方は曇りで、最高気温は27.1℃。
夕方帰宅すると25℃ほどだったんで、窓を全開放すると心地いい。

1年の3分の1のために、四季の豊かさを犠牲にして換気装置を考えて家を外から閉ざすのか?
1年の3分の2のために、日本の気候風土に合うよう通風計画を考えて家を開放的にするのか?

地球温暖化のなかで、エアコンの冷房効率の追及は今や避けて通れないのが現実ですし、
戦後から近年までの新築住宅の性能の低さの改善は差し迫った課題ではあります。

それでも私は、後者を選びたい!

戦前からのホンモノの木組み土壁の家は、現代の技術で高性能化が可能です。

そりゃあZEH相当の6地域でUA値≦0.6W/㎡kとか、C値<1㎡/㎡とまではいかなくても、
断熱気密改修で一般的な省エネに支障なく十分な住み心地に改善でき、
心と体の健康を手に入れることができます。

日本の気候風土に適したホンモノの木組み土壁の家の価値を再評価し、
健康的で心豊かな暮らしを育む伝統的な建築構法を、高気密高断熱一辺倒ではなく、
家づくりの選択肢の一方の柱として選択肢の俎上への復権が求められていると思います。

今週めっきり朝夕が過ごしやすくなってきたとはいえ、
日中は陽射しが照りつければ30℃を越える暑さ!
大工さんも左官さんも汗だくで作業を進めてくださっています。

内壁の土壁中塗りのため左官さん3度目の登場については、
9/1「​土壁~左官の仕事・・・職人の技の綾​」の稿にしましたが、それから1週間が過ぎて・・・

見慣れた荒壁のジャミラ肌には
すっかりファンデーションが施されています。


これが中塗り。・・・と言っても、​工程​は2段階。
一度ラフに塗り付けて不陸(フロク=凸凹)を整える大直しをしてから、
翌日に丁寧に中塗りの仕上げをします。

   ​(↖中塗りの下塗り=大直し / 中塗りの仕上げ↗)​​

貫のところは、必要に応じて寒冷紗を入れて補強し、
その上から更に中塗りします。


竹小舞/荒壁土が無く木摺(キズリ)を打ってあった半壁のところなどは、
砂漆喰を塗り込んでしっかり木摺に食い込ませて下地にした上から、
更に中塗り土を塗りつけます。

黒い部分は、タイル張りの下地ラスです。合板のラスボードではありません。
 
ここで終わりにしても十分美しいし、実用にも耐えられるものです。
昔の家、特に田舎では、ここまで・・・という家も多かったようです。
私の岡山の親戚の家は、もっとでっかい藁スサがむき出しのままでした。


でもこの段階では細かい土に細かい藁スサが混入されているだけですから、
乾いた後に触れると土が手や服に薄っすら付きます。
それでは街中の狭い家ではちょっと具合悪いので、
この上からさらに仕上げとして上塗りをします。
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​   (☝散り决り​(チリジャクリ)のところをよく見ると、上塗りの余地を残してあります。)​​​​​

土なら聚楽壁が有名ですが、一般的には漆喰でしょう。近年では珪藻土も人気です。
で、左官さんが提案してくれたのは、土佐漆喰。
これをベースに、砂や土や晒し藁スサを組合せて配合して、
9/5にサンプルを作ってくれました。

その時点ではもちろん濃い濡れ色なので、乾いたときの色の想像が素人にはつきません。
で十分乾いてから見ると、かなり薄く明るい色合いになりました。
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   漆喰+土+砂 / 漆喰+土+藁スサ
   漆喰+土のみ / 漆喰+土+砂+藁スサ

この写真ではまったく色がうまく再現されていないので、通販の見本としては失格!
でも、言葉で色や風合いを聞いてもピンとこなかったのが、
こうしてサンプルを作ってもらうと一目瞭然!
これも職人さんと顔の見えるやり取りを重ねていく家づくりの醍醐味です。

その左官さん、明日で中塗りの仕上げは終わり。
一旦1週間ほど養生(乾燥)期間をおいて、次は上塗りの工程に入っていきます。

そして、外壁の杉無垢羽目板張りは、もう少しです。