大阪で伝統構法の家づくり!・・・石場建て/木組み/土壁 ~今さらマイホーム新築

五十代も後半、自宅を再建新築。 今さら住宅ローン!建売りのローコスト住宅か…。 で、行き着いたのはやっぱり自然素材、地元の工務店。 手刻みの材木、金物をほとんど使わない躯体、美しい木組み。 間取りの打ち合わせがほぼ終わった頃、棟梁がつぶやいた。 「ホンマは石場建てがエエんやけどなぁ・・・。」 「えっ?石場建てってなんですのん?!」・・・ 家造り、伝統構法について、発信していきます。

外壁ほぼ完成! ・・・ 土壁・防水シート・通気層・杉羽目板

今日の内容は、9/10(木)~12(土)までの、外壁の進捗状況を。

無垢杉の外壁羽目板は2階の一角を残すのみというところでしたが、
翌日9/10(木)には全周張り終えました。


8/25(火)に外壁材を張り始めて​から、実に15日目(日曜を除く)のこと!
この間は夕立が多くたびたび作業中断を余儀なくされたとはいえ、
「大変な作業と分かってたとは言え、ここまで大変だとは・・・!」と棟梁。

屋内と家の前に山のように積んであった羽目板、
残ったのはたった2枚!
棟梁の想定では10枚近く残るだろうとのことだったのですが、
さすが無駄を出さない完璧な読みです。

あとまだ、羽目板の継ぎ目に目板を打ち付ける作業が残っています。

これもいろいろな長さに割り振らないといけないので、
簡単そうに見えてかなりの手間です。

それでも週末の時点では残っている裏側(西面)を鋭意進行中とはいえ
8割方できたというところでしょうか。
でき上った表側は美しく仕上がっています。


ところでこの外壁、ウチの場合は、
竹小舞/土壁+透湿防水シート+胴縁/通気層+赤身杉無垢厚板という構造になっています。
この構造自体は、伝統構法とはいえ、基本的に現代の外壁の構造に準じています。

とはいえ、ここでウチの外壁における温熱環境性能は、独特です。
現代の工法では一般的に、壁体内に断熱材を詰め込むのですが、
この家は土壁なので、断熱材を詰める空間はなく、土が詰まっています。

そこで、断熱材を使っていない分、
土壁の蓄熱性と杉無垢板の断熱性が、温熱環境の性能を代償するという考え方です。

まず、冬場。
土は断熱性能はさほどありませんが、熱容量が大きく、
その蓄熱性の高さが室内の暖気を溜め込む役割を担い、
外装の無垢杉厚板(30mm)が土壁の蓄熱と低い外気温とを隔てます。

そして、夏場。
高い外気温や日光の直射熱は、外装の無垢杉厚板と空気層によって室内側の土壁と隔てられ、
土壁の蓄熱性により冷房のヒヤっと感を溜め込みます。

窓周りなど竹小舞/荒土壁の入ってない部分は、
無垢杉厚板+杉皮再生断熱材フォレストボード+木摺+土壁になっています。

数値的なことを言うと、
杉の熱伝導率は​0.087W/(m・k)​だそうですので、
無垢杉30mm厚の熱伝達抵抗は0.03÷0.087=0.3448㎡h℃/kcalになります。

グラスウール16Kの熱伝導率は0.045W/(m・k)だそうですので、
50mm厚の熱伝達抵抗は0.05÷0.045=1.1111㎡h℃/kcal

因みに​フォレストボード​の熱伝導率は0.046W/(m・k)ですが、
熱容量が320KJ/(㎥・K)と比較的高めという特性があります。(断熱材は大抵2桁。)

土壁の土壁の熱伝導率は0.62〜0.69W/(m・k)と高くないですが、
熱容量は1100KJ/(㎥・K)

*断熱性:熱伝導率(W/(m・k))
コンクリート1.6 < 土壁0.69 < 天然木材0.1前後 < 断熱材0.4前後(小さい方が断熱性が高い)
*蓄熱性:容積比熱(KJ/(㎥・K))
天然木材520 < 土壁1100 < コンクリート2000(大きい方が蓄熱性が高い)



数字に弱い私にはよく分からない議論ですが、
現代の一般的な工法と比べても十分な性能が確保できているように思います。
土壁に断熱材を組み合わせている施工例も見受けられますが、
真冬で氷点下になることはまずない大阪あたりなら、この仕様で大丈夫そうです。

数値に興味のある方は、検索するといっぱい出てきます。便利な世の中です。
「​日本の土壁は断熱化とどう向き合うか​」宇野勇治(愛知産業大学准教授)も興味深いので、
ぜひ参照してみてください。

ところで、その現代の工法を取り入れた部分として、
透湿防水シートの採用があります。

この図で言うと、内装材は中塗り土壁/漆喰、壁体内部は竹小舞・荒土壁、
これが抜群の調湿性能を発揮します。
 
外壁は杉無垢厚板、
そして透湿防水シートが​デュポン™タイベック®​です。

この透湿防水シートは、雨に弱い土壁を守るものです。
といっても、杉の外装材で覆われているので、透湿防水シートがなくても
直に雨がかかるわけではありません。

なので、無くてもいいのかもしれません。
耐用年数も仮に50年としても、家そのものの耐用年数に遠く及びません。
現に日本では古来から、土壁に焼杉板だけで何百年もやってきました。


それでも透湿防水シートを使うことで、
初期の耐久性を延ばすことができるという意味が期待できます。
どうせ使うなら性能の高いものをということで、採用されたのがタイベック。


日本のメーカーも同様の製品を出していますが、
30年相当の耐久性試験が行われ、20年保証というのは、タイベックが業界随一だそうです。
棟梁によると、他メーカーのは手で裂くことができるけど、タイベックは裂けないらしいです。

そのぶん価格は張るようです。
あるブログの記事によると、他メーカーの営業マンは、
工務店の名前を印刷してもタイベックより安いと言って売り込みに来るんだとか。

建築中しばらくの間は透湿防水シートで家全体が覆われているので、宣伝効果はありそうです。
でも、そんなことより性能第一の​日伸建設​。
家の原価は上がってもタイベックと決めているんだそうです。

どうせ後々見えなくなる部分にも手を抜かない・・・、
そんなところも工務店選びの観点です。

その​日伸建設​の仕事ぶりを見に、9/12(土)には大阪・堺市から見学の方が来られました。
聞けば、私のブログを見て興味を持ってくださったそうで、ありがとうございます!
来月にも、また見に来たいとおっしゃってくださいました。
そのころには足場が外されて、外観の全貌が見えているはずです。

新型コロナウィルス禍のため​日伸建設​としては現場見学会の開催は控えているけれど、
個別の見学はいつでも受け入れているそうです。
石場建て伝統構法の建築現場は多分1年に十棟に満たないので、貴重なチャンスです。
この機会に、ぜひどうぞ。