大阪で伝統構法の家づくり!・・・石場建て/木組み/土壁 ~今さらマイホーム新築

五十代も後半、自宅を再建新築。 今さら住宅ローン!建売りのローコスト住宅か…。 で、行き着いたのはやっぱり自然素材、地元の工務店。 手刻みの材木、金物をほとんど使わない躯体、美しい木組み。 間取りの打ち合わせがほぼ終わった頃、棟梁がつぶやいた。 「ホンマは石場建てがエエんやけどなぁ・・・。」 「えっ?石場建てってなんですのん?!」・・・ 家造り、伝統構法について、発信していきます。

雨が降っても見どころの尽きない伝統構法の家 ~ 軒が雨から守り且つ雨を活かす仕組み

昨夜(3/21)のうちに雨はやみ、
今朝は薄日も射して、肌寒いながらも傘なしで出勤できホッとしました。

そう、昨日朝は、雨音で目が覚めました。
障子を開けてみると、けっこう降っています。
これではせっかくの日曜日なのに、引越しの荷物運びはできません。


2階妻面(ケラバ側)の窓から雨を眺めていて、ふと気付きました。
窓ガラスが濡れていない。


反対側の妻面の出窓の窓ガラスも。


1階に降りて南面軒側の掃出し窓の雪見障子を上げて覗いてみると、
ウッドデッキも、壁(窓)際は乾いていて、
もちろん掃き出し窓は下端まで雨がかかっていません。



玄関から外へ出てみます。
無垢木製の玄関引戸。


雨の日は、開けるのに・・・グッ!
ちょっと力がいります。木が湿気で膨らむからか。

これ、「さあこれから雨の中を出かけるぞ!」って実感がわく大切な儀式。

見上げると、どんより灰色の空から雨粒が降り注いできます。
でも、ケラバも軒も深いので、外壁は濡れていません。


雨の日も玄関を開け放しておきたい気分になります。


本物の土でできた玄関ポーチの乾いた三和土に、
雨に濡れた草履の足跡が点々と・・・。
これも珪藻土マットよろしく、すぐに乾いていきます。


屋根半面の雨水を受けた樋からは大量の水が流れ落ち、
溢れんばかりの会所の陶製の亀が心もち嬉しそうにしています。



これが陸屋根だったら、水平面に溜まろうとする雨仕舞いは大変!
コーキングに頼っていたのでは、直射日光に曝されている所でもあり、
十年も持たないのでは?

いや傾斜屋根でも、軒もケラバも無い家は、
直に外壁や窓に雨が直撃。

防水を塗装に頼る外壁は十年毎に塗替えが必要ですが、
雨曝しで、しかも紫外線を直接浴びる面だと、
塗装の防水性能は十年も持つもんでしょうか。

窓枠のチリ(サッシの際)のコーキングも危なそう・・・
壁体内はもしかしてカビだらけなんじゃ?



ふと古い土蔵に目をやると、
軒もケラバもちょっとしかないのに、雨がこれだけしかかかっていません。
特に妻面の庇は効果絶大。

昨今の家のデザインのトレンド、軒やケラバは申しわけ程度。
いや、あるだけマシ! 軒ゼロ住宅や、果てはただのキューブだったり。
窓の上の庇に至っては、ほとんど無いのが当たり前。

これをオシャレとかカッコイイとか、注文する方もする方ですが、
提供する側の専門家たる建築家が、率先して提案している無分別な現状。
この世界的な多雨気候の土地柄で、どうなんでしょうねぇ?!


服部緑地(大阪・豊中)の​日本民家集落博物館​を雨のなか尋ね、
深い茅葺きの軒の下で開け放たれた縁側に佇んだときの
雨さえ愛おしく感じる心地よさが思い起こされます。

前の家でも雨の庭に風情を感じることはあったけど、
今の家は家そのものにも雨の風情を感じます。
雨の日も外とつながっていられる伝統的な構法の家。

今どきの一般的な家は、雨の湿気を遮断することを求められますが、
無垢の木と土壁でできた家にとっては雨も必要な潤い。

雨の日に家全体が吸い溜めた湿気は、
空気が乾燥する日に吐き出されて室内の空気を潤す。
加湿器も除湿器も要らない天然の機能を備えた伝統的な構法の家。

そういえば昨日は、毎日のようにパシッと鳴る無垢の木材が鳴りませんでした。
家が雨の潤いに気を良くして、おとなしくしているようです。


この家は、雨が降っても見どころは尽きません。