大阪で伝統構法の家づくり!・・・石場建て/木組み/土壁 ~今さらマイホーム新築

五十代も後半、自宅を再建新築。 今さら住宅ローン!建売りのローコスト住宅か…。 で、行き着いたのはやっぱり自然素材、地元の工務店。 手刻みの材木、金物をほとんど使わない躯体、美しい木組み。 間取りの打ち合わせがほぼ終わった頃、棟梁がつぶやいた。 「ホンマは石場建てがエエんやけどなぁ・・・。」 「えっ?石場建てってなんですのん?!」・・・ 家造り、伝統構法について、発信していきます。

木と土の玄関 ・・・ 光と風と薫 ~ 内と外を繋ぎ遮る仕掛け

> 昨日5/16には、もう梅雨入り・・・
> 近畿地方では平年より3週間ほど早く、1951年以来統計史上最も早い・・・

で、過去の梅雨入りは?と自分のこのブログを辿ってみると、
なんと、もう2年前のこと。昨日のことのように思い出されます。

> 昨日(2019.6.26)、ようやく「起工式」を迎えることができました。
> 天気予報ではこの日は梅雨入り、雨になるかもとのことでしたが、
> 式場設営中は風もなく夏至すぐ後の強烈の陽射しで暑い!

一昨年の梅雨入りはかなり遅く、夏至の後だったんですねぇ。
大阪の梅雨入りの「平年」は6/6頃、去年は6/10頃。
普通なら今ごろはカラッと五月晴れの一年で最もいい季節なのに、今年は・・・。

4月から5月にかけ、日に日に暖かくなっていくなかで、
この家では天気のいい日には窓を全開にし、外気を積極的に取り入れています。

このあいだの土日も早すぎる梅雨の中休みで、5月らしい陽気だったので、

> 居間から(植付けたヤマブキを)見ると、こんな感じ。
> 今日はいい天気で、(掃出し)窓サッシは1間幅で引き込み全開しています。


居間の掃出し窓は、いわゆる縁側を想定して配置したんですが、
この家では玄関にもその機能をもたせてあり、
こんな気候のいいときには玄関の両開き引戸も全開にしているんです。
 

そんな玄関のご紹介・・・

といっても1月中旬に引越ししてきて以来、一向に片付かない!玄関。
そこでもう半年も前、昨年末の竣工直後12/20の写真で。

お客様がいらっしゃると、一様に「良い薫りがしますね!」とおっしゃいます。
雨だと、なおさら薫りが立ちます。ジメジメした感じには全くなりません。
でも、木製の引戸は、少し開けにくくなります。木と土の玄関は、生きています。

今は夏至(6/21)の時候ですが、
この☝写真、この日は冬至(12/21)頃。午前10時台の陽射しです。
冬でも陽射しが温かいと、こうして全開にすると心地いいのです。

これだけ全開にしても、すぐ前の道からの視線はポーチの格子で遮られます。


網戸があるので、夏の虫にも安心です。
が、今ごろは蚊が出始めているのに、青森ヒバ天然乾燥無垢材枠の網戸や玄関引戸の周りには、
不思議となんとなく蚊が寄ってこないような気がします。


青森ヒバは抗菌防虫作用のあるフィトンチッドのうちヒノキチオールを発散しており、
「総青森ヒバ造りの家には三年間は蚊が入らない」とも言われるそうです。

この家で青森ヒバを使っているのは建具だけですが、
他もヒノキやスギなど天然乾燥無垢材だらけですから、蚊除け効果があるのかもしれません。
(人工機械高温乾燥材ではフィトンチッドは干からびていて、効能は期待できないでしょう。)

玄関から奥の居間や台所が見通せるんですが、
ガラスも紙も張っていない千本格子の建具で、
通気したまま視線を遮ることができるようにしてあります。


玄関式台のところはアクリル板千本格子障子で閉め切ることができるので、
冷暖房効率を高めることもできます。

ここで仕切ることで、玄関土間に風除室の機能をもたせてあるわけです。

上がり框のところには、遊び心でニッチを付けてもらいました。

飾り棚は、棟梁が日伸建設の工房から掘り出してきた​チャンチン​という木に、
棟梁自ら​我谷盆(ワガタボン)​風に彫り物をしたもの。

手摺は、これも工房から掘り出してきたサクラの自然木。
削り出してみると洞(ウロ)が出てきて、これも味と敢えて見える向きに。

ニッチに対面しては、棟梁手作り造作下足箱。

これ、今でも一般的に下駄箱って言いますよね・・・下駄なんて普通は入ってないのに。
ウチは、私が日頃から和装なんで、本当に下駄が入っていますが!

その奥は今風に、ウォークインシューズクローゼット!

この下足箱には裏板が無く、表側は扉を閉めていても実はオープンラック。
その奥には通気窓もあるので、中で空気がこもることはありません。

そして式台は、名栗(ナグリ)の第一人者である京都・京北の原田隆晴さんによる京名栗。
名栗は普通はその名のとおり栗の木を手斧(チョウナ)でナグルんですが、これは敢えての北山杉。

この式台は幅が1間半(2m半)ほどあり、
玄関引戸が両開きに1間幅で引込開放できるようにしてあることと合わせて、
縁側・内縁(ウチエン)的な役割も持たせてあります。

というのは、昔の農家が普段は縁側から出入りしていたこと、
町家が通り土間から出入りしていたことをイメージしたもの。
当初の想い、​2018/4/15稿「こんな家がいいなぁ・・・」​が、形を変えて実現したものです。



式台の下の沓脱石(クツヌギイシ)は、親方自ら見つけてきた丹波鞍馬石(=たんくら)。
鞍馬石とは京都・鞍馬産の閃緑岩で全国的に銘石として知られていますが、超希少!
それに準じた丹波地方産のものですが、これも良質のものは減少しているそうです。

この沓脱石をステップにこの上で文字どおり靴を脱げばいいのですが、
いらしたお客様は憚(ハバカ)られるのか、必ずこの石を避けられる・・・。
それにしても下駄箱同様これも昔からあるのに、こちらは沓(靴)?!

玄関土間は、文字どおり土の間。
壁も、漆喰を混ぜない素の藁スサ入り土壁。
そして床も、京都の深草土に消石灰と苦汁(ニガリ)を混ぜて突き固めた、本物の三和土(タタキ)。

土間の床のことをコンクリート/モルタルでもタイル敷でも一般にタタキと言いますが、
本来は3種の天然素材を和ませせて叩(タタ)いた、日本古来のコンクリート様のもの。
石灰と苦汁のアルカリで、土がカチンコチンに固まります。

といっても土は土ですから、靴の裏に泥がついて上がり込んでも全く気になりません。
しかも柔らかみと温かみのある風合い・・・本当にコンクリートと比べて。
汚れは箒で外に掃き出すだけで、超そうじ楽!

施工については​2020/10/15稿「三和土 たたき タタキ・・・」​に掲載してありますが、
ここまで本格的にしなくても今は​タタキバインド​や​モルタルでも三和土風​にできるので、
伝統構法でなくてもモダンな家でも、ぜひオススメしたいところです。

玄関から外に出て、ポーチも三和土。
内と外がゆるくつながるというこの家のコンセプトを、同じ素材の連続面で表現。
屋外に本物の三和土でも、雨が激しくたたきつけるところでない限り全く大丈夫です。


郵便受のある方の正式な?入口は右側☝なんですが、
実際の出入りはほとんど将来の車椅子での出入りを想定した左側☟になっています。

このスロープのお陰で、今は自転車をポーチの下屋の下に入れています。

このポーチの下屋を支える柱も石場建て。
ここだけ地面に金物で固定すると、家が地震で揺れたら、この柱は折れてしまいます。

そしてこの礎石も、沓脱石と同じ丹波鞍馬石。
自然石なので、表面はデコボコ。
そこで柱の底面は、その凹凸にピッタリ密着するように「​ひかりつけ​」してあります。

この工程については、​2020/10/9稿「・・・玄関ポーチの格子づくり」​に掲載してありますが、
それにしても、玄関の前が石畳になるとは、思いもよりませんでした!
この工程については、​2020/11/27稿「外構にかかっています・・・」​を参照ください。


昨日今日と梅雨の中休みで晴れたのですが、今日は夕方から雲が厚くなってきました。
今晩は3年ぶり、スーパームーンでは24年ぶりの​皆既月食​でしたが、
20:09~19分間だったのに全く見ることができませんでした。

例年ならまだ梅雨じゃないので、いい時季の天体ショーだったのですが・・・。
明日はかなりの大雨になるとの予報。災害にならなければいいのですが。