大阪で伝統構法の家づくり!・・・石場建て/木組み/土壁 ~今さらマイホーム新築

五十代も後半、自宅を再建新築。 今さら住宅ローン!建売りのローコスト住宅か…。 で、行き着いたのはやっぱり自然素材、地元の工務店。 手刻みの材木、金物をほとんど使わない躯体、美しい木組み。 間取りの打ち合わせがほぼ終わった頃、棟梁がつぶやいた。 「ホンマは石場建てがエエんやけどなぁ・・・。」 「えっ?石場建てってなんですのん?!」・・・ 家造り、伝統構法について、発信していきます。

木と土の家 ~ 大工と左官の協同 ・・・ 玄関ポーチの格子づくり

台風14号が近畿にも迫り、明日最接近か・・・。
10/10は晴の特異日で、1964年の東京オリンピック開会式の日になったと聞いていたんですが。
大雨暴風になりませんように!

さて、今週の木と土の家。
先週は左官さん大活躍でしたが、大工さんによる手仕事もどんどん進んでいます。

   ​(面格子の仮設置☝)​​

大昔、建築の職人が細分化されてなかった頃、
家づくりを担う職種は大きく2つ、左官と右官だったそうです。
左官は今同様、土を扱う職種。右官は、木を扱う職種・・・つまり大工。

奈良時代律令制度下において、建築を司る木工寮に属(サカン)という役職があり、
宮中の営繕にに壁塗りをしていたことが左官の語源だと言われています。(諸説あり)


そこから、木工事を行う職人を右官と呼びならわし、
左官・右官を統括する棟梁と呼称するようになったとのこと。
日本では千数百年に渡り伝統的に木と土で家をつくってきたのです。

けれど左右で言うと、雛飾りの左大臣・右大臣は、左大臣の方が官位が高い・・・
右の方が下ということで、大工を右官とは呼ばなくなったという説があるようです。
大工の語源は大匠(オオキタクミ)と言われています・・・木工寮の技術職。


そんなこんなも、今はインターネットでいくつもの解説が見つかるので、
真偽はともかく気軽に調べてみるのも一興です。

今では、木造住宅でも20種もの職種による共同作業。
注文住宅を建てるにあたっては建て主としても、
それぞれの職人さんたちに労いの言葉をかけるなど、敬意をもって接したいものです。

それらの中でも、全ての職種を束ねる棟梁と、
その直属の直属の大工さんの役割は、最も大きなものだというのに異論はないでしょう。

日伸建設​の親方は、「大工が下手でも左官が塗って隠してくれるねんから、
左官仕事の方が大事や!」って謙遜してはいますが・・・。


ともあれ、構造体から細部の造作に至るまで、家の出来はやはり大工にかかっています。
・・・そうではない(大工の腕に左右されない)家づくりという現代の方向性は、
平均以下を量産する仕組みということで、やっぱり私は与(クミ)できないなぁ・・・。

上下はともかく右官左官が、対になって作り上げる伝統構法・・・木と土の家。

工業製品を組み立てるだけの家と一線を画した本来の家づくりが、
現代社会の仕組みの中ではメジャーにはならないとしても、
再び正当に評価され脚光を浴びることを期待しています。



さて、右官・・・いや大工さんのお仕事、今週も進んでいます。
(ようやく話しが戻りました!)
が、先週土曜日(10/3)の続き、左官さんと一緒に手がける玄関ポーチ部分の作業。

10/4稿「​屋内造作は大工の才覚・・・​」の最後の部分と、
10/6稿「​土壁上塗り②・・・​」の最後の部分の続き。
 
丹波鞍馬という黒雲母花崗岩を、玄関ポーチの大庇の2本の柱の礎石に据えます。
詳しいことは分かりませんが、この石には「皮」があって、
その表面の鉄分が酸化して赤茶けた独特の色合いを生むそうです。

勝手な想像ですが、この石は層があって、その境目に沿って割ると、
層の表面が皮になるのかな?・・・と思いました。
切ったようには見えません。平らに割られたって感じの表面です。

なので、石の上面はまっ平らではないので、
その上に角材を立てようにも鋸で真っ直ぐ切った木口(断面)ではピタっと立ちません。
そこで、木口に石の表面の凸凹を写し取って、凹凸に削ります・・・ひかりつけ。


礎石と柱の中心を合わせながら持ち上げて、
柱のてっぺんのホゾを大庇の梁のホゾ穴にはめ込んで垂直を合わせ、
仮のつっかえをかませます。大工さん2人では無理なので、左官さんも手伝います。


左官さんが、礎石の下にモルタルを入れていきます。
練ったモルタルを盛ったらモルタル粉を被せ、さらに練りモルタルを盛り・・・を繰り返します。
こうすることで練りモルタルの水引きが良くなり、早く固まるそうです。

夕方、2本とも立ちました。
この礎石より下の部分は、玄関ポーチの下に埋まってしまうので、
この構造が見られるのは今だけです。

さあもう5時半が迫り、早くも日が暮れ始めているので、外作業は終わり。
左官さんは仕舞い支度です。お疲れさまでした!

この日は並行して、玄関ポーチの2本の柱間に入れる格子を組んでいます。
赤杉の柾目。ものすごくいい材です。美しいだけでなく、屋外での耐久性も高い。
日が暮れても、キリのいいところまで続けます。

格子を一本一本その都度仕上げ鉋掛けをして、
横桟にスライドしてはめていきます。

横桟と縦格子に蟻を刻んでパズルのように組む、いわゆる蟻組み。
玄関正面、家の顔です。釘や木ネジは使わないよう、特に親方の強い指示があったそうです。
「蟻」? 何でアリって言うんでしょうね?!


この段階では、格子の上下は切り揃えてありません。
「今なら乱尺(長さをランダムに変える)にすることもできますよ。」と棟梁に言われ、
「それオモシロイかも!」と思ってしまう変な施主・・・。

家でイメージ画を描いてみたり、家族や棟梁と相談してみたり・・・。


玄関ポーチの格子30本と玄関の丸窓の面格子14本とで、これまたかなりの手間!
週明け10/5(月)にようやく出来上がり、
翌6日(火)に乱尺のまま仮設置してみます。
 
定尺(一定の長さに切り揃える)にしても、
目隠し効果とデザインとのバランスを実際に見定めないといけません。
工場生産の規格品を使わない大工さん手作りの真骨頂です。


再度、家族や棟梁と相談します・・・。
結局はオーソドックスに直線に切り揃えるのがいちばん見栄えがいいとの結論に。

翌10/7(水)、ようやく据え付けることができました。
これで玄関引戸を開けても、前の道からも一段高い向いの家からも、
視線をうまく遮ることができるようになりました。

逆に、これまで正面からダイレクトに出入りしていたのができなくなって、
しばらくはちょっと戸惑いそうです。

ただしこのポーチの格子は防犯用ではないので、
大型家具や家電を搬入するときには外すこともできるようになっています。
そんなお願いも臨機応変に聞いてもらえるのも、大工さん手作りの真骨頂。


あとは正面外壁の腰板が付けば、この家の顔は9割がた見えてきます。
玄関ポーチそのものは左官さんの仕事なんで、
顔が整うのはまたその後で・・・。