大阪で伝統構法の家づくり!・・・石場建て/木組み/土壁 ~今さらマイホーム新築

五十代も後半、自宅を再建新築。 今さら住宅ローン!建売りのローコスト住宅か…。 で、行き着いたのはやっぱり自然素材、地元の工務店。 手刻みの材木、金物をほとんど使わない躯体、美しい木組み。 間取りの打ち合わせがほぼ終わった頃、棟梁がつぶやいた。 「ホンマは石場建てがエエんやけどなぁ・・・。」 「えっ?石場建てってなんですのん?!」・・・ 家造り、伝統構法について、発信していきます。

間仕切り建具・青森ヒバの玄関引戸 ~ 建具職人の技と大工との協同

10月最後の週の後半、木・金・土、そして日曜まで! 追い込みです。
というのも、11/3には2回目の洗いが入って、
そのあといよいよ畳が入るからです。

10/29(木)、勤務を終えて現場に行くと、
棟梁が何やら衝立のようなものを造っています・・・何でしょう?
ヒントは10/28稿「​ライフライン・・・いろんな職種の職人さんの力で​」の8段目の写真。

・・・そう、洋便器と小便器の仕切りの衝立でした。
本当は部屋を分けたかったんですが、間取りの都合で入口を1か所しか設けられず、
洋便器に座って横を見ても小便器が見えないようにしたんです。
男性にとっては、小便器は本当に使い勝手の良いものです。
でも女性にとっては、やはり心理的な抵抗があるでしょう。
写真の角度で少しはみ出ていますが、実際は完全に隠れるよう計算された大きさです。


さて翌10/30(金)、1回目の洗いが入りました。
出勤していて日中の作業は見ていないんですが、帰りに現場に寄ってみると、
柱や梁に巻かれてあった養生の紙がすっかり外されていました。

で、大黒柱をふと見上げると、何と!瓢箪型の埋木が・・・。
2本の鼻栓の下1本を微調整のため抜いてあるので、綺麗に見えています。

聞けば、ここに少し傷があって避けられなかったので、掘って埋めてあったんだとか。
最初からあった瓢箪、養生紙が巻かれていて今まで気づきませんでした。
こんな大工さんの遊び心が微笑ましく嬉しく、温かい気分になりました。

そして同時に、建具屋さんも登場!
昼間に持ち込まれた間仕切り建具の調整加工が、日没後も続いています。

木組みの家。もちろん建具も、建具職人手作りの無垢材。
出来合いのメーカー品と違って、建具枠と戸本体のユニットをはめるだけではありません。
工房で作ってきた物を、現場に合わせて鉋で削るなど微調整します。


日伸建設​の家の場合、
このような造作建具の無垢材は、自社ストックの天然乾燥材から提供します。
なので、全て建具職人が手配するより、経済的なんだそうです。

それに建具職人さんの話しでは、
日伸から出してもらった木はすごく良くて、扱いやすいとのこと。

また、日伸の大工さんが作る敷居や鴨居などの加工精度が高く、建具の調整が楽なんだとか。
一般的な家だと、建具をはめるのに結構難儀する場合が多いのに、
大工さんが自分で建具をはめる気で敷居や鴨居を作っているところは、違うんだそうです。

そういえば、施主によるブログとかで、建具の隙間や歪みの不満を散見します。
ハウスメーカーの家だと、大工も建具職人もその都度その時々のバラバラの外注で、
お互いの協同というわけにいかないでしょうから、やむを得ないところかもしれません。


希望どおり繊細な千本格子が組まれた3連全引込開放の障子戸は圧巻で、
建具職人さんの技に感嘆と感謝しかありません。

板戸は、引き戸も開き扉も、1階も2階も、同じデザインシリーズです。


引戸のレールは木製! 赤い硬い木・・・。
どうも、強化木製の建具用の部材があるようです。<脚註>

ウレタン製の戸車の方が先に摩耗するほど丈夫なんだそうで、
木組みの家にとてもよく似合います。

場所の必要に応じて、鍵もかかるようにしてあります。


そして、これも希望していた、千本格子戸も入りました。
これは玄関/階段ホールとリビングルームを仕切る障子(紙/ガラス)無しの2連全開放引戸。
玄関から一直線に見通す位置のLDKと、小上がり書斎を、心理的に仕切ります。

さらに! とうとう玄関の両開き引戸が取り付けられました。
この材は、日伸建設が提供した青森ヒバ。数年前から寝かせていたものだそうです。

檜が主流の関西ではあまり使われることがない逸材、
まさに玄関に相応しい材をストックから選んでくれました。

青森ヒバは、アスナロ属の一変種のヒノキアスナロ。
ヒノキチオールなどの薬効成分が多く含まれているため、
腐朽や白蟻に大変強く、蚊も寄せ付けにくいそうです。
(参照:​「青森ヒバの不思議」​東北森林管理局)

この玄関引戸は、横幅の広い玄関土間を生かして、1間幅で全開放できます。
岡山の親戚の農家がこの方式で、憧れていたんです。

でも街中なんで、全開放してもちょうど前にはポーチの目隠し格子が入っていて、
道路からは直接は見えないようになっています。

 
10/31(土)も、大工さんは鴨居、建具屋さんは戸当たりの調整。

協同作業が続きます。

そしてこの日、ついに玄関扉に鍵が取り付けられました。

それまでコンパネを打ち付けて玄関を封鎖していたのが、
文字どおり玄関で施錠できるようになりました。


11/1(日)。
この日は大阪・堺市からの見学のお客さんが来られることもあり、
朝から棟梁も親方も経理さんも現場にお揃い。

このお客さん、できれば石場建て伝統構法で建てたいとのこと。
それが難しくて在来工法になったとしても、日本の気候風土に合った
手刻み木組みと本物の土壁の家が実現できればいいなぁと思います。

そして棟梁は、明後日3日の2回目の洗いに向け、最後の追い込みです。

床に敷いてあった養生シートも柱などの養生カバーも全て取り払われ、
40mm厚の無垢杉板フローリングや栗の変木柱などが姿を現します。

8/10稿「​京名栗 杉の玄関式台 ~ 京都京北 原田銘木店の名人技​」で述べた
玄関式台も、あらためて姿を現します。

「おじゃまします・・・」初めて素足で踏みしめます。

「温かい!」合板突板フローリングしか知らなかったので、新鮮な驚き。
杉は柔らかく温かい感触と知識として知っていても、百聞は一見に如かずとはこのこと。

見学のお客さんが帰られ、棟梁も一仕事終えた昼下がり、
レギュラーコーヒーを淹れて棟梁と妻と3人で床に腰を下ろしてホッと一息。
なんて贅沢な時間でしょう!
(棟梁、本来は日曜のご家族との時間なのに、引き留めてすみません!)

この床、無垢材なんで、当然少なからず節があります。

そこで、通路となる写真で言うと左側は、節の少ない板を、
机や椅子や座布団を置く想定の右の方は、節の多めの板を選んであるとのこと。
木を見極めることのできる大工さんならではの心配りです。

1階のその床に座っていると、2階から柔らかい光が。
そこは、明り取りと全館冷暖房のための半吹抜け、スノコ天井になっています。

白い檜の合間合間に赤い桜が挿してあり、良いアクセントに。
棟梁の遊び心が感じられて、嬉しいところです。
たったW1.5間×D0.5間しかないんですが、想像以上に豊かな空間になりました。

明日、棚などこまごま残った造作作業をしてしまえば、
明後日は洗い、明々後日はついに完了検査を迎えます。
そしてそのあとは畳・・・。

いよいよ石場建て伝統構法の新築も、
本体工事は大詰めです。
 
<註>木製引戸レールは、↓こういうもののようです・・・。