大阪で伝統構法の家づくり!・・・石場建て/木組み/土壁 ~今さらマイホーム新築

五十代も後半、自宅を再建新築。 今さら住宅ローン!建売りのローコスト住宅か…。 で、行き着いたのはやっぱり自然素材、地元の工務店。 手刻みの材木、金物をほとんど使わない躯体、美しい木組み。 間取りの打ち合わせがほぼ終わった頃、棟梁がつぶやいた。 「ホンマは石場建てがエエんやけどなぁ・・・。」 「えっ?石場建てってなんですのん?!」・・・ 家造り、伝統構法について、発信していきます。

こんなところにも木組みの技 … 棟梁手作り特注本棚 ~ 地場の工務店との後々までのお付き合い

昨日(10/23日)大阪管区気象台は、近畿地方で「木枯らし1号」が吹いたと発表しました。
記録が残る1955年以降で最も早い(昨年と同じ)​木枯らし1号​となりました。
家の中は一日じゅう外の最高気温20℃前後を維持しているから暖房はまだ・・・
などと大見得を切ってはみたものの・・・。

ところがその翌日から最高気温18~19℃の日が続き、北風が冷たく、
いくら室温を保てる家でも最高外気温よりは上がらないわけで、
さすがにそれでは寒い。

で、結局は舌の根も乾かぬうちから、最高気温が20℃に達しない日は…と、
1階の床置きエアコン1台だけ20℃設定にして、暖房を入れることにしました。

そんな日は、室内では病気がちな老犬を飼っているので、
家を空けるときもエアコンは入れっぱなし。
それで家じゅうまんべんなく21℃弱、エアコンなしのトイレは19℃ほど。

夏の西陽を遮ってくれていた西の窓の簾を外して、
日射を積極的に取り入れるようにしました。


そんな寒さの昨日の土曜日。
昼下がり、久しぶりに我が​日伸建設​の棟梁が訪ねて来てくれました。
棟梁に手作りをお願いしていた本棚が届けられたのです。

我が家は当初、何も収納家具を置かなくていいよう、
造り付けの造作家具をお願いするつもりでいました。
けれど計画が石場建て伝統構法に変わって費用がかさみ、それは断念しました。

結局は前の家のマシな家具をとりあえずいくつか持ち込むことにしたのですが、
今となってはそれは良かったと思っています。
造作家具だとライフスタイルが変わっても、交換がそうそうできません。

三百年(?)住宅、世代が移り住む人が変わり価値観が変わっても、
造作家具ではなく置き家具の方が時代に合わせ対応できるからです。

ということで、前の家からいくつか家具を持ち込んだものの、
本棚はこんな合板の古びて表面の突板が剥がれかけているようなのしかなく・・・、

じゃあ、大量の蔵書をどうするか?! 古本屋や図書館で半分に減らすにしても・・・。
そこで、国産無垢材のこんなのを買おうかと思いました。

なら、DIYか?
前の家なら迷わずホームセンターで集成材を買ってきて、自分で作ったと思います。
けど、この石場建て伝統構法の家に・・・う~ん、困ったぁ。

そこで思い切って、我が棟梁にオーダーメイドをお願いすることにしたんです。
自分で置き場を決めて、採寸して、こんなふうにパソコンのペイントで作図して、

棟梁に直に現場を見に来てもらって、略図を渡して説明して、あと詳細はお任せ。

こんなことにも対応してくれるのが、地場の直属大工のいる工務店の強み!
この家を建て、この家のことを熟知した大工さんとの、引渡し後も続くお付き合い。
本当に頼り甲斐があって、ありがたいことです。

ここ、小上がり書斎、カウンターデスクの背面の壁にひとつ。


リビングのテレビの横の壁面に2つ目。


3つ目は2階の窓、全開放できる障子/遮光引戸の大きなレール枠の下に1間幅で。

3台も発注しました。

とはいえ、​日伸建設​には次々と途切れることなく新築案件が入ってきて、
大工さんは日々設計したり手刻みしたり建てたりしているわけで、
その合間の作業になるので、それなりに時間はかかります。

寸法などは私が考えて略図は渡してあったものの、
どうやって作るか考えるのは棟梁、詳細設計も棟梁、材料を見繕うのも棟梁、刻むのも棟梁。
で、何か月か気長に待って…急ぐものでもなし…キター!のが昨日。

トラックから降ろされる3台の本棚。

最終工程は、現場で。

1つ目、小上がり書斎の。

おお~! 天然乾燥檜の無垢材。節穴がいい味出してます。
一本の木材から切り出した板なので、木目も節穴が連続しています。

この小上り書斎の分は、底板を少し浮かして、畳を跨いで両隣りの畳の縁に置き、

間の床下収納の蓋になっている畳をハネ上げて引き抜けるようにしました。

棟梁、曰く「木組みでつくりました!」

おお~っ! ダボでも、だだの組接ぎでもなく、
蟻組みやホゾ接ぎを駆使してる!

木ネジなど金物も使わず、本物の木組みで組み立ててあります。
接着剤を使ってなくてもビクともしません。なのに分解することもできます。
(参照:​図解「指物の継手と仕口」​)

2つ目、リビングのテレビの横の。

太い柱と真壁の段差の間に、スッポリとピッタリと納まっています。

そして3つ目。2階の窓下、可動棚の。

3つとも柱間にピタッと納まって、さも初めからそこにあるよう。さすが誂え!

可動棚は、ダボに載せる式でいいと思っていたのですが、
棟梁、ここもこだわって、刻みを入れてピタッと納まっています!

棟梁、サラっと「せっかくですから・・・。」

この間、新築の建て前が入ったりしてすごく忙しかったのに、
棟梁、メチャメチャ手間をかけてくれたのね!!・・・ほんとうに感謝です。

ブッチャケ、それなりの値段はします。
でも「お値段以上」は、ニトリの比じゃぁありません!
手間に対する正当な対価の軽視・・・。今のそんな風潮は、政府が率先したのでは?

背板は土壁を覆いたくなかったので、張っていません。
本が土壁に当たらないように、杉板で止まるようにだけしてあります。

いやぁ、出来が良過ぎて、本を入れられない・・・。

全くの無塗装、白木ですから、色も変わっていくでしょう。シミも付くでしょう。
でもそうして、古本に本棚がしっくり馴染んでいくことでしょう。

手間ひまかけた本当に良いものを、手入れしながら長く永く使い続ける。
日本人が昔から大切にしてきた暮らしの哲学。

家も家具も・・・。

安く良さそうなものを使い捨てして消費を煽る、
現代のスタンダードへのアンチテーゼ。

檜の香る百年もののこの家だけの手作り本棚。
またひとつ、この家に魅力が加わりました。

【追記】

来週の日曜10/31は、衆議院選挙。
この失われた十年で​韓国より所得も購買力も下がってしまった​日本。
働きに見合った対価が得られ、
高くても本当に良いものやサービスを買える社会に変えることができるかの試金石。