左官の技 再び ~ 中塗り と 上塗りサンプル ① ・・・ 職人と共につくる家
9/1から土壁の中塗りが始まったことは、
「土壁~左官の仕事、雨樋~板金屋の仕事・・・職人の技の綾」の稿で触れましたが、
4月「荒壁付け始まる・・・土壁づくり:表面下地塗り」、
5月「土壁塗り第二弾~裏返し1日目・・・左官屋さん奮戦記」に続き、
3度目の左官さんの登場。
次は、大直しから中塗りの段階です。
荒壁は文字どおり、大きな藁スサが混じった荒い土。
藁が発酵することで生じるリグニンという物質によって土に粘り気が出て
(ものすごく単純に言うと土の納豆化)、芯の竹小舞と一体化することで強度を発揮する、
表面は当然ガサガサ・・・どころか、藁むき出し。触れると土が付きます。
そこで、まずは大直し。不陸(フロク)=凸凹を均すために土を少し荒めに塗ります。
そして、その上に中塗り土を塗って滑らかに整えます。
この中塗りが、仕上げの上塗りの下地になります。
柱には加工時にチリジャクリ(散り决り)=柱と壁面の境目の柱の溝を切ってあります。
中塗りの工程でシャクリの中まで土を埋め込むので、
荒壁土が乾燥し収縮して空いたチリの隙間が完全に塞がれ、気密性が高まります。
昔の家はこのチリジャクリが無かったので、
柱と壁面の境目から隙間風が吹き込んでいました。
それで、土壁の家は寒いという印象が強く刻まれてしまっています。
(左/上:中塗り 右下:大直し)
(左/上:中塗り 右下:大直し)
けれど今では伝統的工法といっても現代にマッチした工法に進化しており、
土壁は涼しく温かく調湿性も気密性もある最も優れた性能を持つ壁なのです。
仕上がった中塗りよく見ると、藁スサが入っているのが見えますが、
仕上がった中塗りよく見ると、藁スサが入っているのが見えますが、
かなり細かい土で平滑に塗られているので、これで仕上げでも良さそうなものです。
でもこの段階では、まだ土なので触れると付いたり、パラパラと落ちたりします。
そこで更に仕上げに上塗りをするのですが、
昔は(今でも場合によっては)中塗り土壁のまま1~2年置いて、
その後あらためて漆喰で上塗りをしたそうです。
または庶民の家は、上塗りをしないままというところも多かったようです。
しかし時間に追われる現代では、そうも言ってはおれません。
この家も、既に着工から10か月が経とうとしています。
そこで、中塗りに続いて上塗りの工程に入れるよう、
今日は左官さんと棟梁と私たちとで上塗りの仕様の相談です。
おっと、下に降りないと!・・・サンプルづくりが始まりました。
用意されたのは、
これらを、いろいろな配合で練って塗ってみて、サンプルを作ります。
ベースの漆喰は土佐漆喰と言って一般の漆喰と違って微細な発酵藁スサが既に入っています。
そこに強度を高めるために更に少しガラス繊維スサを添加しては?という左官さんの提案に、
我が棟梁、ここまで来たら徹底的に自然素材にこだわりたいと麻スサを逆提案。
さて壁の質感ですが、
そもそも漆喰のみの真っ白くツルっとした壁は好みではありませんでした。
そこで当初の希望では、漆喰に砂を混ぜた砂漆喰仕上げにしようと思っていたのです。
まずは土佐漆喰に砂だけを入れて練り合わせます。
ところが砂漆喰だけでは思いのほか真っ白すぎたので、
土を入れて土色にし、土壁っぽいラフな仕上げしてみてはどうかと試作。
これでもまだラフさ素朴さに欠けるかなと細かい晒し藁スサを混ぜてみてもらうと、
これがとってもいい感じ!・・・決定。
ということで、これに土の量や藁の量を部屋によって調整し、
北側の暗い部分は土を少なく明るい色に、
素朴な質感を強調したい玄関は藁スサを多めにって感じで、
塗り壁は乾燥するとかなり薄い明るい色になるので、
調合のときの濃い色合いが塗って乾燥してどんな色に落ち着くのか、
こんな職人さんと直にあれこれ悩み相談しながら一緒に我が家を造れるなんて、
その棟梁と大工さん。
今日も外壁張りの作業に鋭意取り組んでいます。
8/25(木)に北面(1F2F)から始めた羽目板張りのことは、
それから西面(1F)から南面(1F2F)へと進み、
昨日9/4(金)の段階で東面(2F)と一周していたのですが、
今日は残っていた西面(2F)にかかっています。
そして、羽目板の継ぎ目を塞ぐ目板張りが、
また最初の北面から始まりました。
夕方、それまで家を覆っていた幕が一部外され、初めてその姿を現しました。
それまで全貌が見えなかっただけに、想像以上の出来映えに感動!
棟梁自身も初めて見る姿。
先週九州を縦断して襲った台風9号で、
熊本城を破壊した大地震や立て続きの九州地方の豪雨。
今度の10号も九州縦断コースで心配です。
被災された方々に、心からお見舞い申し上げます。
近年ことに荒ぶる自然の神々。
ただただその脅威に対抗し打ち勝とうとする西欧の価値観とは異なった
神々と折り合いをつけ自然と共存し生きながらえる日本古来の価値観をもって、
石場建て伝統構法の家づくりに取り組んでいます。
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