大阪で伝統構法の家づくり!・・・石場建て/木組み/土壁 ~今さらマイホーム新築

五十代も後半、自宅を再建新築。 今さら住宅ローン!建売りのローコスト住宅か…。 で、行き着いたのはやっぱり自然素材、地元の工務店。 手刻みの材木、金物をほとんど使わない躯体、美しい木組み。 間取りの打ち合わせがほぼ終わった頃、棟梁がつぶやいた。 「ホンマは石場建てがエエんやけどなぁ・・・。」 「えっ?石場建てってなんですのん?!」・・・ 家造り、伝統構法について、発信していきます。

我が家の土壁 … 美と機能性と ~ 雨の日に想う心地よさ

Googleフォト。スマホを開くと、1年前の思い出とか表示されたりします。
それで出てきたのが、ちょうど土壁の中塗りをしていたときの写真たち。

​​(2020.9.2)​​

この家は、木と竹と土と紙の家・・・。

あらためて思い出させてくれるこの便利な仕掛け、
実はアメリカのGAFAの暴利の原資と知れば複雑な思いもあるけど、
それにしても便利な機能。


ところで、先日来ハマっているのが、アニメ「​宇宙兄弟​」。
2012年からの作品なので今更なんですが、Netflixで9/17配信終了と表示が出て、
おっとぉ!と何気なく見始めたら99話まで目が離せなくなってしまったんです。

うーん、国産国産とさんざん言っておきながら、
Amazon Fire TV StickでNetflixを見ながらGoogleフォト・・・、
GAFAにどっぷり加担していると思うとケッタクソ悪い!

それはさておき、
宇宙飛行士が宇宙服を着込むシーン・・・宇宙服って一人で着られない。
そこで、着付けてもらうんですよね・・・着物みたいに。

着物の着付けといえば先日8/29、こんなときですが長男の結婚式・披露宴。
妻も私に合わせて着物。着付師さんに留袖を着付けてもらいました・・・宇宙服みたい!
私は着物は自分で全部着たんですが、女物の着付けはできません。


式場は森に囲まれた無垢材の建物で、すごく素敵な式でした。
先に結婚した次男も別の式場でしたが、そうでした。
長男は「洋」次男は「和」でしたが、いずれにせよ樹木の場を選んだ四人はエライ!



さて、宇宙兄弟を連日見ているテレビの背景に何気なく目をやると、
今となっては当たり前の光景・・・土壁。
細かいことを言うと、表面は土に漆喰と麻スサを混ぜ込んだものですが。


そう、この家の壁という壁は、全て土壁なんです。
表面が板張りしてある脱衣場も、芯は竹小舞に壁土。
この家の耐震性能と居住性能だけでなく、心の平穏にも大きな役割を占めています。

宇宙兄弟も、何度も何度も登場人物の回想シーンがでてきます。
そういえば1年前、この壁は中塗りの段階。

想い返せば・・・

2年以上前の初夏(2019/6/25)、荒壁用の壁土づくりが始まったのでした。
刻んだ藁を練り込んで発酵させ、ひと夏寝かせます。
妻も左官さんと棟梁と一緒に練っています。

そして1年近く経った春、青緑色に発酵して独特の匂いを放つその壁土を、
たくさんの左官さんたちが美しく編み上げられた竹小舞に塗り付けていきました。

私(↓)も塗りました。大変な重労働です。

先日結婚式を挙げた長男(↓)も駆けつけて、手伝ってくれています。

​(2020/4/21)​

一か月ほど置いて、9月末から上塗りが始まりました。

(拙稿2020/9/5「土壁上塗り①~漆喰…左官の工夫と技」他参照)
その上塗りが、いま目にしている「土壁」です。

なんでカッコ付の「土壁」かというと、
この家は正真正銘、壁の竹芯からぜんぶ土だからです。

というのも、今どき漆喰や珪藻土などの塗壁が見直されてきていますが、
それらは石膏ボードや合板に1~3㎜薄塗りされているというのがほとんど。
似たように見えても、壁を軽くたたいてみれば違いは歴然!

この家は、土の上に土を塗り重ねていきます。
そしてその上塗りは、
土だけのところと、漆喰を混ぜた土のところがあるんです。

中塗り用の「​砂漆喰​」を上塗り仕上げに使うこともあるようですが、
この家の場合は漆喰に砂を混ぜた塗り壁材というより、
上塗り用の壁土に漆喰を混ぜたものなので、何なんでしょう?

・・・とりあえず勝手に「土漆喰」と私は言っているのですが、
ともかくこの家の内壁の上塗りは、
4種類の仕上げ材を場所によって使い分けてもらいました。

過去稿でも述べているように、
サンプルを左官さんに作ってもらって、
色合いや配合を棟梁も含め3者で一緒に検討したんです。

そのココロや如何に?!

理想は、混ぜ物なしの土だけ仕上げの壁。
けれど、上塗り用とはいえ、壁土のままでは直に触れるとほんの僅かに剥がれます。
そこで、直に触れることのまずない南側の明るい窓際のみ、土だけ仕上げとしました。


じつは漆喰って、調湿性はあまりないのです。
そもそも漆喰の調湿性能は40g/㎡程度、JISの規定によれば調湿建材でさえないとか。
最低70g/㎡以上調湿しないと調湿建材とは呼ばないんだそうです。
​​(この単位については、よく知りません。)​​

そこで、できるだけ土のままの上塗りを採用してもらったというわけです。

そして、居室部分は、その土だけの壁の色にできるだけ近いように、
表面に触れても手に付かない程度の最低限の漆喰を混ぜた土にしました。

これが、冒頭に挙げたテレビの後ろの壁。

でもこうしてみると、この一連の壁の前にはローボードや床置きエアコンなどがあって
直に触れることはまずないので、土だけの上塗りでも良かったかもしれません。

さらにもう一つ、北側のユーティリティースペースやトイレや階段室用に、
漆喰の配合を多くして明るい色の土漆喰を作ってもらいました。

​(スマホ写真では、色の違いはよく分かりませんが・・・)​

光が届きにくく暗めなので、こうしておくと(↓)普段は同じぐらいの色に見えます。

ユーティリティースペースの照明を点けると(↓)、色の違いはハッキリ!


よーく目を近づけてみてみると、1年近く経って、
上塗りに微細なヒビが入っているのが分かります。

けれど、これらのヒビが空気と壁の中の土とを繋いで、調湿性能を高めている!
勝手にそう解釈して納得しています。

そして極めつけは、玄関(↓)と、

外壁(1階正面の上半分だけ↓ですが)と。


大きめの藁スサと砂を混ぜた粗めの土でラフに仕上げた土だけの壁。

そこは床が本物の三和土ということもあり、
家じゅうで最も清浄な空気が感じられてお気に入り!

本当はこんな(↓)仕上げも憧れたんですが、

​​(古民家カフェなつめ)
そのときに稲穂が手に入らず断念…。


8月末からやっと残暑が戻ってきたかと思ったら、また昨日から雨続き。
気温は外も内も25~56℃、湿度は外は80%台、内は70%台ってとこ。

今日は一日中在宅なので、いつもの雨の日のように窓はほぼ全開のまま。
湿度は決して低くはないけど、外気と繋がっている方が心地いい。

雨の降り始めの匂い、雨音が強まったり弱まったりも直に感じる。
何度か書いていますが、この家には雨もよく似合っています。
そんな雨の日の心地よさは、この土壁があってこそじゃないかな。

石場建てなら必然的に土壁・・・
そんなことさえ知らぬまま始まった伝統構法の新築。

土壁なら、百年近く経ってこんなふうになっても(↓枚方市氷室の古民家)、

百年以上たってこんなふうになっても(↓南丹市園部の古民家)、

かえって風格が増すというもの。

究極の自然素材、大地そのものの土壁、時を経て土に還る。
太古に人が穴居で暮らしていた遠い記憶が、究極の寛ぎに誘う。

しみじみ​日伸建設​とこの家に出会えて良かったと思う雨の一日でした。