今日の話題は、石場建て伝統構法の我が家の話しではなく・・・。
2020/5/25「築49年農家屋敷を解体から救いたい!どなたか利用してください!…」
と投稿したのを機に、その家はめでたく解体を免れ新たな歴史が始まったのですが、
こんどはもう手遅れという悲しく寂しいお話し。
ゆうに築百年という元造り酒屋さん。
解体の危機に瀕していたその古民家が
にぎわいコンソーシアム園部/カフェCocoCanとして蘇ったのが6年前の2016年。
息子が夫婦生活をスタートさせるにあたってシェアハウスするってんで
私も週末のたびに通ってDIY補修に協力した、私にとっても思い出の建物。
そのときでもかなり傷んでいたのを騙し騙し手を入れて住めるようにしたんですが、
ついに傾きが酷く崩壊しそうになってきたので土蔵を解体することになったとのこと。
本漆喰を塗るワークショップも開催されました。
この壁側には以前は巨大な酒蔵が建っていて雨が掛からなかったので、
元は土壁(荒壁)が露出してたんですが、若者たちの手で白亜の漆喰塗壁に!
柱まで白いのは、スクリーンにしてプロジェクターで上映会をするため。
柱まで白いのは、スクリーンにしてプロジェクターで上映会をするため。
行って話しを聞くと、表の店舗建築以外は、土蔵だけではなく母屋も解体するとのこと。
土蔵は足元が崩れかかっており、
母屋も確かに6年前より歪みは酷くなっています。
母屋も確かに6年前より歪みは酷くなっています。
新屋再生プロジェクトを立ち上げた地元の住職の話しでは、
江戸時代に園部川を北に移設した河床を浚渫土で埋め立てて
街を造成したのが本町通だとのこと。
道理で水が集まってきて湿気が酷く、白蟻を呼びやすい地域なんだそうです。
逆にそのお陰で良質の地下水が湧くので、いいお酒が造れたんでしょう。
既に電源はきてなかったので、土蔵の中は真っ暗。
大きな長持ちがまだ残っています。
6年前にはこれが積み上げられていました。
その奥の壁際に段梯子があったんですが、
その当時も少し傾いていたので、息子が反対側の床を大きく抜いて、
そちら側に段梯子を架け替えて、荷物の上げ下げをしやすくしました。
そちら側に段梯子を架け替えて、荷物の上げ下げをしやすくしました。
二階には立派な丸太梁が架かっています。
相当丈夫なはずなんですが・・・
いかんせん土台がやられているもんだから、
水路が通っている側は完全に崩れかかっています。
そちらがわの換気窓からは、庭と祠が見えます。
江戸時代からこの家と商いを見守っていたんでしょうか。
その庭に降りて母屋を見上げると、やはりかなり傷みが目立ちます。
縁側の掃出しのガラス障子。写り込みが揺らぐ昔ガラス。
冬以外は全開放して戸袋に収納する前提なので、レールは1本しかありません。
補修に釘を打とうとしても歯が立たず、釘が曲がってしまったもんです。
北山杉の産地、美山と隣接しているだけあって、
天井を見上げると磨き丸太が美しく並んだ数寄屋造り。
欄間障子には松葉桟の職人技。
誰も触らず日も当たらず、百年経ってるのかどうか、まだ傷んでいません。
その座敷。床柱は、当時は珍しい南洋材の銘木唐木
百年前は造り酒屋として羽振りがよかったんでしょう。
棚の襖絵は銘入りの直筆もの。
これも、全くといっていいほど傷んでいません。
母屋の裏側の縁側は、
6年前も鴨居が下がってきていて、掃き出し窓が開けられなかったんで、
私がジャッキアップして杉丸太をツッカエに入れたものです。
私がジャッキアップして杉丸太をツッカエに入れたものです。
裏側は陽射しがよく当たるのと井戸があるからなのか、傷みが表より激しく、
ここまでくるとリノベーション再生は難しい、解体対象の建物って感じがします。
足元の井戸から湧く水を引く池。息子が住んでいた頃は整備して、
金魚を飼っていたんですが、ものすごく元気に大きく育つそうです。
水質の良さは、さすが元造り酒屋です。
水質の良さは、さすが元造り酒屋です。
天井を見ると、もう使われていませんでしたが、
今も木組みの家の新築で使いたいほど。
でも、敷設できる電気職人さんは、今やほとんどいないそうです。
この家はまだ建っていなかったでしょうけど、
このご先祖さんは被災していたかもしれません。
歴史のいっぱい詰まった建物が、
歴史のいっぱい詰まった建物が、
このゴールデンウィーク中に解体されます。
立派な木材や土蔵の壁土、再利用できないもんでしょうかね。
新屋再生プロジェクトが始まったのは、2016年。
新屋再生プロジェクトが始まったのは、2016年。
今は長引くコロナで、こんな街の賑わいづくりの取り組みもできず、
園部の宿場町、古民家の建ち並ぶ街道沿いは静まりかえっています。
新屋再生プロジェクト。
私が今は亡き父の名義で寄付した、その父の名前が今も銘板に刻まれています。
これ、この古民家の古材の肥松(コエマツ)の板。
雨と西陽の紫外線に6年間曝され続けて、一切反ったりしていません。
私が今は亡き父の名義で寄付した、その父の名前が今も銘板に刻まれています。
これ、この古民家の古材の肥松(コエマツ)の板。
雨と西陽の紫外線に6年間曝され続けて、一切反ったりしていません。
この家のお向かいさんは、刃物屋さんと建具屋さん。
どちらも古民家のままで商っている職人さんの老舗。
でも、その街道筋を訪れるたびに、大手ハウスメーカーの家が増えています。
数百年の歴史ある街並みから、またひとつ街の財産が消えていきます。