大阪で伝統構法の家づくり!・・・石場建て/木組み/土壁 ~今さらマイホーム新築

五十代も後半、自宅を再建新築。 今さら住宅ローン!建売りのローコスト住宅か…。 で、行き着いたのはやっぱり自然素材、地元の工務店。 手刻みの材木、金物をほとんど使わない躯体、美しい木組み。 間取りの打ち合わせがほぼ終わった頃、棟梁がつぶやいた。 「ホンマは石場建てがエエんやけどなぁ・・・。」 「えっ?石場建てってなんですのん?!」・・・ 家造り、伝統構法について、発信していきます。

半世紀前の家が現代の家に生まれ変わる ・・・ これからの古民家として ~ リノベーション完成見学会

待ちに待った見学会に妻と行ってきました。

解体寸前の農家屋敷の活用を呼び掛けたもの。

この家、「古家付土地」として何年も売りに出されていたもの。
まだ石場建て伝統構法による拙宅の新築を始めていなければ、
自分たちが買い取りたいところだった!と妻が見つけた物件でした。

見に行ってみると、立派な木組み土壁の家。
来月までに売れなければ解体され、数軒の分譲地になるといいます。

築五十年。建売り住宅やローコスト住宅など新建材の家なら老衰期でしょうが、
「本物の家」としてはようやく青年期から円熟期、
これから古民家の域に差し掛かろうという頃。

「古家付土地」として売りに出されるから、買い手がつかない。
この家にこそ価値があるのに!・・・今これを新築すれば、憶!
それを見抜ける人にとっては格安の掘り出し物、お宝です。

幸いこの家は、大きな増改築が行なわれていませんでした。
このような古い家は、木組みの構造をよく分かっていない業者によって、
大切な梁や柱などの構造体が切られるなどの無茶な増改築がされていることが多く、
そんな手の付けられない状態なら、建て替えるしかないそうです。

なので、こんな古民家を見つけて入手しようと思ったら、
本物の大工さんや伝統構法に詳しい設計士にまず見てもらってから、
購入を検討したほうがよさそうです。


見比べてみてください。

こういう物件に手を入れる場合、
一千万円に満たない額で間取りなど基本的な構造を変えずにリフォームする方法と、
新築に近い程度の費用をかけてフルリノベーションする方法があると思います。

今回はその中間を狙って、間取りから完全に改築してしまう部分と、
傷んだ部分を補修して古いままの良さ残す部分をうまく取り合わせた好例でした。

これならローコスト住宅を建てる程度の予算で
得難い居住空間を手に入れることができる、現実的な選択だと思いました。



外見はパっと見は、あまり変わっていません。
けれど、この家の顔となる元応接間の窓枠は、
アルミサッシから木製サッシに入れ替えられて、風格が格段に増しました。


家のいちばん日当たりのいい良い部屋を、普段は使わない応接間にする・・・、
昭和アルアル!ですよね。
ここが家族が日頃集う現代的で機能的なLDKになりました。


洋風の折り上げ天井にシャンデリアだったところは、
同様に折り上げ天井ですが大工さん手作りの、無垢の板目が美しい格天井に、
そして中央には手作りの網代が組み込まれています。



フローリングも、プリント化粧合板から、
無垢メープル材に張り替えられ、格段に足触りがよくなっています。

家の北側、裏側のいちばん薄暗いところがDKというのも、昭和アルアル!
そこもすっかり間取りを変えられ、浴室やトイレなど水回りが集められました。
広々とした洗面所やランドリースペースも設けられ、現代生活に対応。


新しいキッチンの横、元はタイル張りの浴室だったところは、大きなパントリーに。


とっても使い勝手のいい現代的かつ木と漆喰壁の際立つシックな、
素敵なリノベーションになっていました。



一方、農家屋敷に特徴的な田の字型の畳敷きのお座敷の部分は、
床下の傷みの補修・補強や畳・襖・障子のリニューアル程度で、
基本的には元のままです。



神棚も仏間も押入もそのまま。


​​


割れたガラスを、前の住まい手が古切手で接いでいるところも、敢えてそのまま。
このセンスは素敵です・・・私でも残したやろな!


北側の内縁は裏の茂みで薄暗く湿気がひどく床が傷んでしまっていましたが、
木を伐り払って複層ガラスサッシに入れ替え床板を新調すると、
見違えるほど明るく素敵な空間になりました。


ここから南側の広縁を見渡すと、あんな向こう側・・・広い!
こんな立派な地松(国産赤松)の梁は、今ではなかなか手に入らないそうです。


2階。けっこうエエ加減な改装がされていたので、原状復旧リフォームです。
板の間の合板フローリングは、無垢の杉板に。それだけで元の安っぽさが見違えます。
元々あった略式の床の間とも釣り合いがとれるようになりました。


建付けが少し悪くなっていた古いアルミサッシは
複層ガラスの現代のサッシに交換されていました・・・
って、何とお施主さんがDIYで交換されたんだそうです・・・すごい!

小屋裏の、まともな床板も張られていなかった納戸も、
このとおり書斎にでも事務所にでもできそうな素敵なロフト部屋に。
ここだけでも10畳近くある・・・どんだけぇ!


この家の魅力は、そのロケーション。
2階から見渡す甍の波は、大都市近郊にあってなかなか得難いこの地の魅力!
陸屋根は論外としても、大手メーカーの家や建売住宅なども、似つかわしくない街並み。


見学会初日の午前中には、ご近所さんもたくさん見に来られたそうです。
これがアノ家!!!ウチもできたらこんなふうにしたい・・・などと、
口々におっしゃっていたとか。

既にサイディングの家に建て替わってしまっているご近所の家もありますが、
古い家に住み継がれている方々がその家を活かし続けるという選択肢を
目の当たりにされたことには、大きな意義があったと思います。

1階に戻って、LDKから新調された格子越しに見えるお隣の古民家・・・
厨子2階形式なので明治期の建築かも?・・・も、この家のロケーション。
絵になる風景です。


この家を後にするときの玄関から外が見えるのも、絵になります。
玄関は床板や式台など、もともと柾目の美しい材が使われていたので、そのまま利用。
けっこう薄汚れていたのに、洗いをかけて見違えるほど綺麗になっていました。


帰途、家の前の道。この狭さがまたいい。車の往来は滅多にありません。
正面に見えているこの家の離れ(別棟)だけでも、
先日建てた石場建て伝統構法のウチの家と同じぐらい・・・どんだけぇ!


ここは、ウチと同じ枚方市内で、利便性も高い地域。
建蔽率60%の土地に建延40坪程度のハウスメーカーの家を建てるより、
ずっとずっと経済的で豊かで健康的な暮らしが手に入る・・・。

これって、大いにアリ!ですよね。


リノベーションを手掛けた日伸建設の社長さんによれば、
この家が生き延びて第2の人生を迎えることができたのは、
この家自身のポテンシャル、「引き」「惹き」なんだそうです。

だからこそ、昨今のスクラップ&ビルドを前提とした家ではなく、
本物の家づくりが​SDGs​(持続可能な開発目標)の観点から、今必要だと思います。
 
素敵な住まい手さんご家族を得て、この家は鍼灸院としても活用され、
これからの百年間が始まります。

あなたの周りに、こんな物件、眠っていませんか? 死にかけていませんか?!
呼びかけて良かったと、心から思います。

お問い合わせは、リノベーションを手掛けた​日伸建設​か、コメント欄へ。