大阪で伝統構法の家づくり!・・・石場建て/木組み/土壁 ~今さらマイホーム新築

五十代も後半、自宅を再建新築。 今さら住宅ローン!建売りのローコスト住宅か…。 で、行き着いたのはやっぱり自然素材、地元の工務店。 手刻みの材木、金物をほとんど使わない躯体、美しい木組み。 間取りの打ち合わせがほぼ終わった頃、棟梁がつぶやいた。 「ホンマは石場建てがエエんやけどなぁ・・・。」 「えっ?石場建てってなんですのん?!」・・・ 家造り、伝統構法について、発信していきます。

大阪府立高専学生見学会@日伸建設

夏にさかのぼって去る8月19日(月)のこと。
大阪府立大学工業高等専門学校の学生さんたちの見学を受け入れました。

というのも、石場建て伝統構法に決めてから、
ウチの家を研究に役立ててほしいということで、
棟梁が学生時代に師事していた
大阪府高専門の木造建築の先生にお声をかけていたのです。
それでまずは、研究室の学生たちの実地研修の場にということです。

と言っても、その時は建築確認申請中という段階。
まだ何も建っていません。
そこで、以下3件を巡る企画とうことで、先生から依頼がありました。

(1)2か月前(6/25)に始めて、寝かせてあった壁土の熟成現場。

(2)無垢材天然乾燥倉庫や手刻み工房の見学と、鉋がけ体験。

(3)無垢材軸組による建築中現場の見学。

約束の3時、あいにくの小雨模様のなか、
先生と3~5年生の学生さんたち8人が、交野市の日伸建設に続々と集まってきました。
先生の研究室は、都市環境コース。で、唯一の木造建築。構造力学や建築構造学です。
これからの木造建築の理論を背負って立つべき若者たち。
石場建てや伝統構法について知ってほしい!
私たちも施主として、素人ながらリキが入ります。

まずは事務所内で、先生から石場建てや土壁についての解説。
といっても、学生さんたちはこれまで「石場建て」という言葉さえ、聞いたこともありません。
しかも、土壁の家なんて、実際にはほとんど見たことがありません。
神妙に耳を傾ける学生さんたち。分かったような分からんような・・・。

それから、親方(社長)による無垢材・自然素材の家や大工についてのお話し。
実体験に基づいてトツトツと語られる内容には、さすが説得力があって、
思わず学生さんたちも聞き入っています。

そのあと、事務所から車で3分ほどのミカン畑の一角にある壁土の熟成現場へ。
藁に含まれる納豆菌の働きでかなり臭いよ!と事前に言ってあったので、
覚悟して壁土を覆うブルーシートをめくる学生さん。
意外と臭くない!と、青灰色に発酵により変色した泥土を初めて見て感動。
土壁の家を生活の中で知っている私だって、熟成中の壁土なんて見るのは初めて!
もう一生見ることはないかも・・・と、学生さんたちも興奮気味。


次はまた車で1分の倉庫に移動して、見学。
檜の無垢柱材や赤松の変木(曲がり)梁材などが山積み。
もちろん数年物の天然乾燥材。中には大工さん自身が冬山に分け入って伐ってきたものも。
圧巻の光景に、学生さんたちは目を丸くしています。

一般的な家は3.5寸角(建築基準法最低限)の人工乾燥集成材を使うのですが、
ここにあるのは5寸から太いものでは9寸の大黒柱用材。
3.5寸角:5寸角は断面積でいうと、ざっと2倍! 3.5寸角:2×4材だと約0.3倍。
これなら仕口による断面欠損はほぼ問題にならず、
接合金物を使わない頑強で且つ粘りのある接合ができます。


人工高温乾燥材は時短によるコストダウンには優位でも、
有用成分まで揮発してスカスカになってしまうけど、
天然乾燥材は粘りによる強度や芳香や防腐防虫性など木本来の性能を保つこと、
国産材・・・つまり我が国の気候風土に育つ在来樹木は、
そもそも生きる上での免疫として在来の腐朽菌や白蟻に対する耐性が強いこと、
近年一般的な柱材である北欧産ホワイトウッドは、腐りやすく耐久性が低いこと、
ツーバイフォーの北米産SPF材も、白蟻に弱く耐久性が低いうえ、
輸出国側の収益維持のため付加価値のつく製材でないと輸入できないことなど、
国産天然乾燥材の優位性の説明にも学生さんたちは驚いていました。

次はまた車で1分の工房に移動して、鉋がけ体験。
工房の天井には巨大な変木の丸太が吊り下げられ、いつの日か出番を待つ姿が圧巻。
床には一面に鉋屑が積もっていて足元はフカフカ、芳香いっぱいです。

棟梁は毎年行われる「削ろう会」で入賞した実力の持ち主。
手本に削って見せる鉋屑は透けて見えんばかり…何ミクロンの世界に、
学生さんたちからは思わず歓声が上がります。

そして学生さんたち、初めての鉋がけに挑戦。
近頃は大工さんでも大手ハウスメーカーの建築工では鉋の技能は必要ではないし、
若い彼ら彼女らが鉋を持ったこともないのは無理もありません。
木造建築専攻としては、大変貴重な実技体験になります。

私も挑戦! もちろん鉋掛けは初めてではありませんが、
大工さんの鉋を持たせていただくのは初めて。
で、引いてみると、スルスルっと滑るように最後までおぼろ昆布のように!
こんなにスムーズに鉋掛けができたためしがなかったので、ビックリ。
熟練の大工さんの鉋の刃の砥ぎと調整には、本当に脱帽です。


それからまた車に分乗して、隣りの寝屋川市の建築中現場へ。
そこは在来工法ではありますが、無垢の木組み現しの隆々たる構造、
計画中のウチの2倍はあろうかという豪邸です。

構造体としては筋交いの入った壁ですが、
大きく開いた吹抜けがあり、1階からも2階からも、小屋組みが全て見えます。
一般に大壁にして天井を張ってしまうと構造材は一切見えなくなるところ、
これでは一切手が抜けません。
小屋束に通し貫がとおり楔で締めてある、金物を使わない伝統的な工法。
それが耐力構造としてだけでなく意匠としても見事です。

そして梁は日伸建設お定まりの無垢赤松丸太材。
曲がりくねった形がアーチの役割を果たし家を強固に支えています。

無垢材なので当然のことながらヒビが入っていきますが、
ヒビは強度を落とす要因になるどころか、ヒビの入る天然木材の方が強いことや、
釘や金物を極力を使わず手刻みの仕口で接合してある方が強いことなどの説明に、
学生さんたちからは驚きの声が。


また一般に既製品の階段をはめ込むだけのところ、
手刻みの造作階段が寸分の狂いもなく組込まれているのに釘付けの学生さんも。

この規模の家をただ同じ間取りで作るにも、
機械乾燥の集成材のプレカットで釘やコーススレッドで組み立てることはできるでしょう。
けれど、強度や耐久性には恐らく大きな差が出ます。
そのような家は、地震などの大きな衝撃で粘りがないので、折れるしかありません。
また金物は温度差による湿気を呼び、木を内部から弱らせることにつながります。

けれど日伸建設が手掛けるこの工法なら格段の安心感があるし、
それは今やどこの工務店でもできるという技ではありません。
在来工法の枠内でこれだけの技が見られれば、我が家の伝統構法にも期待が高まります。
こんな技を古民家ではなく建築中の新築で目の当たりにして、
学生さんたちも滅多とない機会に感動を隠せないようでした。

後日いただいた学生さんたちの感想の概要を以下挙げておきましょう。

ハウスメーカーと大工の違いが分かり、大工という職業の凄さについて気づかされた。
*学校では学ぶことのできない情報・知識を身につけることができて楽しかった。
*自分の持っている伝統の技術を次世代に渡そうとする親方の精神にかっこよさを感じた。
*建築中の伝統的な家も塗る前の壁土も、今後は見る機会のほとんどない貴重な体験だった。
*大工のイメージが大きく変わった。完成後の木の表情が楽しみ。
*梁など木に入っているヒビの話が大変面白く感じた。
*木の家にふれる機会がなかったので嬉しかった。丸太がダイナミックで見入ってしまった。
*今の家は化学物質も多く廃棄も容易ではなく、リサイクル面でも伝統構法の家が増えて欲しい。

日本の将来を背負う若者たちに、もっともっと知って触れてほしい・・・。
いろんなことを感じてくれた学生さんたちとのご縁に感謝の、
アッと言う間のすてきな3時間でした。
 
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