大阪で伝統構法の家づくり!・・・石場建て/木組み/土壁 ~今さらマイホーム新築

五十代も後半、自宅を再建新築。 今さら住宅ローン!建売りのローコスト住宅か…。 で、行き着いたのはやっぱり自然素材、地元の工務店。 手刻みの材木、金物をほとんど使わない躯体、美しい木組み。 間取りの打ち合わせがほぼ終わった頃、棟梁がつぶやいた。 「ホンマは石場建てがエエんやけどなぁ・・・。」 「えっ?石場建てってなんですのん?!」・・・ 家造り、伝統構法について、発信していきます。

真夏の木と土の家 … 表面温度を実測 ~ 断熱性能と輻射熱は?!

新型コロナで緊急事態宣言が初めて出され、学校が休校になった昨年春。
職場で非接触体温計による体温測定が始まったのを機に、
私も家用に買ってみました。

そして今、変異株が猛威を振るい、あのころより数段ひどい状況のなか、
一年延期で東京オリンピックが強行され、昨夜は開会式。
地元東京ではどうか知りませんが、大阪ではほぼ話題にもならず。

夏休みの時期に入ったというのにどこへも行くあてもなく、
朝から蝉の大合唱が真夏を虚しく盛り上げています。

せっかく非接触体温計(表面温度計)を常備したものの、​
あれ以来まったく使うこともなく、この機会に夏休みの自由研究?!
石場建て伝統構法の新築の表面温度をあちこち測ってみることにしました。


今日7/24も朝から猛烈な陽射し。
でも夏至の頃の6月(6/21稿「​夏至・・・​」)を思い返せば、太陽が昇るのが遅くなってきました。

7時半には石鉢の向こうの植え込みまで陽が射していたのに、今日は8時でもまだ。
ここは東側が河岸段丘の山側なので、そもそも日の出は遅いのですが・・・。

でも、東正面には朝陽が直射。

玄関土間の中まで陽が射して、格子の陰が光を際立たせます。

(朝一番、お天道様を玄関にお迎えします。時季によって格子の影が変化していきます。)


さあ、測定開始。

これ、中国製の安物なので、信憑性は心許ないんですが、
自分の体温を測ると他の体温計と差がないので、多分ほぼ正確だと思います。
測定範囲は32.0~42.9℃なので、Loは32℃未満、Hiは43℃以上という意味です。


【9時(7/24)】外気温:30.5 ​​(外気温は2階のインナーバルコニーで測定)​​

*屋外の地面(場所によって差が大きいので1℃単位の概数)
 三和土:(日向)42 (日陰)35
 御影石:(日向)37 (日陰)33
 コンクリート:(日向)42 (日陰)34
 アスファルト:(日向)Hi (日陰)36
 杉ウッドデッキ:(日向)Hi (日陰)36 (寒冷紗の下)40


*壁(場所によって少々差があるので0.5℃単位の概数)
 東外壁:(日向)Hi  東土漆喰内壁:37.5
 南外壁:(日陰)36.5  南壁土内壁:33.0

【12時(7/24)】外気温:33.5

*1階床
 杉板床面:Lo
 石場建て床下気温:32.0

*玄関ポーチ(午前中に日が当たっていた後の日陰)
 三和土:(打水前)36.5 (打水5分後)34.5
 御影石:(打水前)37.0 (打水5分後)36.5

【16時(7/22)】外気温:35.0(※)

*壁(0.1℃単位)

 南杉板外壁:(日向)Hi (日陰)36.6 ​​(15時頃、太陽高度が下がると南面に少し陽が射します。)​​
 南壁土内壁:33.7

*屋根裏天井杉板:36.0


*西陽出窓 遮熱型Low-E複層ガラス(0.1℃単位)
 ガラス内側面:42.7(Hi)  簾+ガラス面:37.1
 ガラス+障子:36.8   簾+ガラス+障子面:36.2
(夕暮れ、お天道様をここからお見送りします。時季によって格子の陰が変化していきます。)

​​※今日は夕方から妻に誘われてコンサートへ。大阪交響楽団モーツァルト。それでこれは、一昨日の測定値。・・・というか実は一昨日、西陽の直射を受ける窓を測ろうと思い付いて始めたことなので、時系列があべこべになっています。まったく同じような天気だったので、大目に見てください。​​


さて、考察。

杉面は、直射日光で表面温度は一気に上昇します。
三和土もかなり暑くなりますが、御影石は意外に三和土より温度が低い。
日陰では似たような表面温度ですが、御影石とコンクリートは特性が似ているようです。

ウッドデッキの上の寒冷紗は、
遮光率80%と表示してある割には下はそんなに暗くならないので疑っていたんですが、
意外にそれなりの効果があるようです。


壁は、外壁杉板に日光の直射があって熱くなっても、
内壁(土塗または土漆喰塗)は最高37℃台、
直射日光が外壁に当たっていなければ内壁は33℃台と、案外熱を伝えていません。


いわゆる最新の高断熱住宅ほどではないでしょうけど、
外気温が35℃でもエアコンなしで室温を29~30℃に抑えられるのですから、
杉板30㎜と通気層と竹小舞土壁(断熱材なし)の断熱性能は、なかなかのものだと思います。

床はといえば、杉無垢板の表面は、素足で心地いい。
何℃か分かりませんでしたが、寝転がると冷た過ぎずフワッと涼しい。

石場建ての床下は、日陰の外気温より1.5℃低い。空気の動きが床下を守ります。

そして心配だった屋根断熱。

ガンガンに日光の直射を浴びて、瓦の表面は大変な温度になっているはずですが、
屋根裏の杉板天井は36℃にしかなってない!

屋根の構造は、2020/2/26稿「​屋根断熱…フォレストボード​」にあるように、
上から淡路燻瓦・杉野地板・通気層・フォレストボード60mm・天井杉板30mm。
日伸建設​の棟梁の判断、さすがです!

省エネでよく言われる打水は、日陰では多少効果ありそうです。
​でも顕著に効果が出るのは、石敷より、水の浸透保水性のある三和土。

 ​(昼過ぎ、日陰に入ってから打水をして約1時間後、まだ湿っています。)​
やはり昔は舗装してなかったから意味があったんでしょうね。
日向で透水性のないところに撒いても、文字どおり焼け石に水でしょう。

面白いのが、西陽の直射を受ける西側の出窓。
5/3稿「​夕陽に寛ぐ・・・​」や6/21稿「​夏至の西陽・・・​」で、
この出窓の趣旨や仕掛けについて述べたところです。

その仕掛けのひとつ、遮熱型Low-E複層ガラスも、
さすがに西陽の直射にはかなわないということ。
やはり窓は、断熱のネックであるには違いありません。

それを承知で設置した西の窓ではありますが、
障子の断熱性能がいかに優れているか、簾がいかに効果的かが、
ここでハッキリと数字に表れています。

直射日光を外壁に受ける内壁の表面温度と大差ないとは、意外でした。
エアコン節電術で、簾や葦簀を掛けましょうとはよく言われることですが、
日本古来の障子の性能が見直され、もっと評価されるべきだと思います。


温度計の性能がたいしたことなくてこの程度しか分かりませんでしたが、
こういう0℃~80℃まで測れるような機種にしておけば良かったですね。


私は着物が好きで日ごろから和装です。
着物好きの人は、よく言います・・・着物って涼しい(暖かい)んですよ!
でも、暑い日は何を着ていたって暑い! 涼しいと言ってしまえば、それは身贔屓、誇張。

石場建て・伝統構法・木と土の家・・・、これも同じこと。
確かに比較的、体感的に涼しいし温かい・・・、けれど、
暑い日はそれなりに暑いし、寒い日はそれなりに寒い。

主観的な感覚を言っているだけでは、説得力に乏しいと思うんです。
ただの身贔屓、我田引水ではなく、客観的にこうだから自分はこう感じる!
その客観性があってこその性能評価だと思って、こうして夏休みの自由研究を楽しんでいます。