大阪で伝統構法の家づくり!・・・石場建て/木組み/土壁 ~今さらマイホーム新築

五十代も後半、自宅を再建新築。 今さら住宅ローン!建売りのローコスト住宅か…。 で、行き着いたのはやっぱり自然素材、地元の工務店。 手刻みの材木、金物をほとんど使わない躯体、美しい木組み。 間取りの打ち合わせがほぼ終わった頃、棟梁がつぶやいた。 「ホンマは石場建てがエエんやけどなぁ・・・。」 「えっ?石場建てってなんですのん?!」・・・ 家造り、伝統構法について、発信していきます。

工法を選ぶ・・・RC造・S造・2×4工法・在来工法 そして伝統構法

このブログでは、「伝統構法」について語っています。
ここで伝統工法ではなく構法という字を使っているのは、
単に建て方というだけではなく「仕組み」「構造」全体を指しているからです。

日本で家を建てるには、世界で最もと言っていいぐらい多様な工法があります。

伝統構法以外は、RC(鉄筋コンクリート)造にしても、S(軽量/重量鉄骨)造にしても、
木造では2×4(木造枠組壁)工法にしても、在来(木造軸組)工法にしても、
地面に埋め込んだコンクリート基礎に躯体を緊結させ、
その躯体をガチガチに固める「剛構造」という考え方の上に成り立っています。
そしてさらにそれぞれの中でいろんな工法がありますが、全て剛構造なのは同じです。

一方で伝統構法は、唯一「石場建て」にします。
地面に置いた礎石に、直に柱が乗っているだけで建っています。
そして、躯体の部材同士を金物で締め付けず、木と木を仕口や継手だけで組みます。
ウチも床板を釘打ちするなどはしますが、柱や梁などの主要構造体には金物はありません。
地面からも自由で、躯体もしなやかな固め方にする「柔構造」の考え方で成り立っています。

1/11「​耐震性…伝統構法/石場建ては不利か?​」でも触れたように、
伝統構法だけが地震に際して地震動を直に躯体に伝えず、
受けた震動もしなやかに受け流すという仕組みなので、
建て方(工法)と仕組み(構造)そのものを包含して「構法」と書き表しています。

さて、伝統構法以外の種々の工法のなかに在来工法というのがありますが、
木造軸組工法という意味では同じカテゴリーです。
在来というと日本古来みたいな名称ですが、木造軸組という意味だけで在来、
実は伝統工法を簡略化させて1960年代頃から発展した比較的新しいものです。

​(Wikipedia[​木造軸組構法​]より引用)​

構造計算は、基礎に緊結しない伝統構法は限界耐力計算、
基礎に緊結する在来工法は許容応力度計算という別の方法で計算します。

耐震性という意味では、RC造でもS造でも2×4工法でも在来工法でも、
きちんと構造計算をしてパスしていればいんですが、
大手ハウスメーカーだと包括的な型式認定で一戸一戸は構造計算しなくていいし、
一般の木造だと4号特例で​​構造計算しなくていい​のです。
​(型式認定や4号特例は、ぜひ調べてみましょう。
つまり建築基準法は、あくまでも住まい手の安全ではなく業界の利便を優先した
おかしなことになっているのです。

伝統構法は柔構造のため建築基準法に幸か不幸か規定が無く、
それゆえ建てるにはかえって構造計算が義務づけられており、
それには大変な手間と費用がかかるのですが、構造性能が担保されています。
なら、数ある工法のどれを選ぶか?
私は余裕があれば伝統構法、一般的には個別に構造計算​し​耐震等級3​がとれる
無垢材・自然素材の在来工法をお勧めしたいと思っています。

まず、一般に費用は、RC造 > S造 > 木造となり、
大手ハウスメーカー > 中堅ビルダー > 地域の優良工務店となります。
大雑把に言って、材料費や工程にかかる人件費や業者の経費の差です。

次に将来性です。
RC造やS造や2×4は、躯体の構造上の制約で改築がほとんどできません。
またそれらは、工法が特定の企業に属しているクローズド工法なのに対して、
木造軸組工法はオープン工法なので、
住まい手の世代替わりや生活様式の変化への対応という意味からも圧倒的に有利です。

もうひとつ、健康な暮らしの観点から。
木・鉄・コンクリートの箱でマウスを飼育したら、 どの巣箱が一番長生きできるか?
という有名な実験があります。
23日齢での乳仔の生存率は、木製85.1%、金属41.0%、コンクリート6.9%という結果だそうです。
​(​岡山県木材組合連合会​より引用)​

もちろんマウスをヒトにそのまま当てはめることはできないでしょうし、
コンクリートや鉄骨の家の内装が全面的にその素材むき出しというわけではありません。
RC造や鉄骨造は、だからこそ、内装に無垢材や自然素材を用いることに意味があるといえるでしょう。

ならば木造ならいいかというと、2×4工法は構造上、
腐朽や白蟻にかなり弱い外材と接着剤で貼り合わせた合板の使用が前提になっていて、
健康な暮らしという観点からは疑問があります。


というわけで、私は地域の優良工務店が手掛ける在来工法しかないと思っています。
地域の優良工務店は、良いものを作ることで伝統の技能を次世代に繋げ、
人(職人も施主も)を育て地域に貢献するという、産業の本来的使命を担っています。
そして、そんな工務店を育てるのは、施主です。

・・・という、構造計算のできる工務店に出会えるか?!
あるんですよね! そんな工務店って、調べれば意外とたくさん。
自分で調べられなければ、優良建築家も選択肢でしょう。

いずれにせよ、施主の努力にかかっているというほかはありません。
現代はインターネットでも書籍でも、いくらでも情報が手に入れられます。
住宅展示場での営業トークを鵜呑みに家を買うなんて・・・。

在来工法は、伝統構法から派生したとはいえ、
西洋の「自然に対抗する」という思想をもとに発展したと言えるでしょう。

そして高度経済成長時代の旺盛な建売り需要に応えるべく、
その時代背景から多くが粗製濫造という状況をつくりだしてしまい、
また構造計算をしなくてもいいという法的欠陥もあって、
それが近年の大地震や巨大台風の直撃によって甚大な被害を出すことになりました。

そのため「在来工法は弱い」と非科学的な偏見が情緒的に喧伝され、
すっかり印象が悪くなってしまったようです。
けれど、以降、在来工法の技術革新は飛躍的に進んでいます。

それなら、在来工法にしておけば良さそうなものを、
なんでまた伝統構法なんかに?!

うーん、よく分かりませんね。
伝統構法は、日本という地理的特性の地域において、構造的に優れているのは確か。
でも、それだけではないかな。

自然に逆らわない、しなやかに自然と共存する、自然から生まれ自然に還る・・・。
それが伝統構法の本質、根本思想をそこに見たからからでしょうか。
人類は森で誕生し、日本人は森と田んぼに囲まれて暮らしてきた。

自然とゆるやかに繋がっている・・・。
土壁の下塗り(荒壁・裏返し)が終わって、
いよいよ来週から窓サッシが入ったり床が張られたり大工造作が始まろうという今、
あらためてそんな家に仕上げていきたいと思っています。